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昔から「硬いものを食べると顎が丈夫になる」「よく噛んで食べなさい」と言われてきました。皆さんも子どもの頃、ご両親からそう言われた経験があるのではないでしょうか。
確かに、食べ物をよく噛むことは、食べ物を細かくして唾液と混ぜ合わせ、消化を助けるうえで大切です。

では、硬いものをよく食べることは、子どもの歯並びや顎の成長、お口の機能の発達にもよい影響を与えるのでしょうか。
2026年、東京科学大学と株式会社ロッテなどの研究グループが、子どもの食習慣とお口の機能の発達との関係について、興味深い研究結果を発表しました。
今回の調査では約4人に1人が該当
食べる、飲み込む、話すといったお口の働きが、年齢に応じて十分に発達していない状態を、歯科では「口腔機能発達不全症」と呼びます。
この研究では、5~7歳の子ども92人を対象に、お口の機能と食習慣の関係を調べました。その結果、21人(約23%)が口腔機能発達不全症に該当しました。
なお、92人を対象とした調査であるため、日本の子ども全体に当てはまる数字ではありません。それでも、決して一部の子どもだけの問題ではないことがうかがえます。

「硬いものを好む」と「硬いものを食べる」は違う
今回の研究で注目したいのは、次の2つの結果です。
- 硬い食べ物を好む子どもでは、口腔機能発達不全症に該当する割合が低かった
- 一方、硬い食べ物を食べる頻度と口腔機能発達不全症との間には、統計学的に明確な関連が認められなかった
つまり、「硬いものをたくさん食べさせれば、口腔機能発達不全症を予防できる」という結論は、この研究からは導けません。
むしろ、逆の可能性も考えられます。もともとお口の機能が十分に発達している子どもだからこそ、硬い食べ物を無理なく噛むことができ、好んで食べているのかもしれません。
今回の研究はある時点での状態を調べたものであり、どちらが原因でどちらが結果なのかは明らかになっていません。
噛むことには意味がある。ただし…
硬い食べ物を噛むことには、噛む力を育てる、唾液の分泌を促すといったメリットがあります。
また、成長期の子どもを対象に、硬めのガムを使った咀嚼トレーニングを行った研究では、歯列の幅が広がり、奥歯の傾きにも変化が認められたという報告があります。
ただし、これは一定期間、継続的に咀嚼トレーニングを行った研究の結果であり、日常の食事で硬いものを多く食べることとは、区別して考える必要があります。
このように、噛むことにはさまざまなメリットがありますが、子どものお口の発達を考えるうえでは、食べ物の硬さだけに注目するのは十分ではありません。
お口の発達は「食べ物」だけでは決まらない
子どものお口の発達には、食習慣のほかにも、次のような要因も関係すると考えられています。
- 鼻や気道の問題:アレルギー性鼻炎、アデノイド肥大、慢性の鼻炎など
- 呼吸の仕方:鼻呼吸、口呼吸
- 姿勢:頭や首の位置、食事中の姿勢
- お口の癖:指しゃぶり、舌を前に出す癖、唇をかむ習慣など
- 歯並びや顎の発育:噛み合わせ、顎の形や成長
- 食習慣:食べ物の硬さ、噛む経験、食べ方

これらの要因は互いに影響し合っています。
歯科医院だけでは解決できないこともある
例えば、アレルギー性鼻炎やアデノイド肥大などによって鼻呼吸がしづらく、いつも口を開けている子どもがいます。
こうした子どもに口を閉じる訓練だけを行っても、鼻づまりなどの原因が解消されなければ、十分な効果は期待できません。歯科的な対応だけで解決しようとすると、背景にある原因を見落とし、効果の乏しい訓練を続けてしまう可能性があるのです。

だからこそ、歯科医師による口腔機能や噛み合わせの評価に加え、必要に応じて耳鼻咽喉科や小児科などとの連携が重要になります。また、保育園や幼稚園、学校など、子どもが日常生活を送る場所での気づきも大切です。
とはいえ、こうした連携を個々の医療機関だけで実現することは容易ではありません。歯科医師会が中心となり、医科、保育・教育機関、行政などと連携し、必要な支援につなげられる地域の仕組みを整えることが、今後の重要な役割になると考えます。
参考文献
- 根岸慎一,林亮助,斎藤勝彦,葛西一貴.硬性ガムトレーニングが混合歯列期児童の咀嚼運動および第一大臼歯植立に与える影響.Orthodontic Waves(日本矯正歯科学会雑誌). 2010;69(3):156–162.https://cir.nii.ac.jp/crid/2051714791914660736
- Kawamura J, et al. Evaluation of Oral Function Development and Eating Habits in Children Aged 5–7 Years. Journal of Oral Rehabilitation. 2026;53(9):1618–1625.https://doi.org/10.1111/joor.70213







