サブメインビジュアル

かんたんネット予約

予約

044-855-3060

診療時間

2026.10.08
お口の健康
ガムとの上手な付き合い方

最近、ガムを単なる「お菓子」ではなく、口腔ケアの一つとして捉える動きが広がっています。大手菓子メーカーも、主力のキシリトールガムについて、今後はその視点をより前面に出していく方針を打ち出しました。

もともとガムは、私たちの生活にとても身近なもの。診療でも「毎日のように噛んでいます」という患者さんは珍しくありません。お話を伺うと、歯のためというより、仕事中や運転中の気分転換として習慣的に噛んでいる方が多いようです。

実は私自身も、ストレスがたまるとガムを2〜3粒口に放り込み、気持ちを切り替えるように噛むことがあります。文字どおり「邪念を噛み殺す」感覚です。

ただ、歯科医師の目から見ると、ガムは「歯に良いからたくさん噛めばよい」というものでもありません。長時間噛み続けたり、強く噛み込んだりすれば、かえって歯や顎の負担になることもあります。

今回は、ガムを噛むメリットとデメリット、そして歯や顎に負担をかけにくい噛み方について考えてみます。

キシリトールを過信してはいけない

一時期、キシリトールガムを習慣的に噛むことで、むし歯予防に効果があるという考え方が広く紹介されていました。テレビCMなどでも、「キシリトール=むし歯予防」というイメージを前面に出した広告をよく目にした記憶があります。

最近では、以前ほどその効果を強くうたう広告を見かけなくなったのではないでしょうか。

背景には、キシリトールそのものの効果だけでなく、むし歯の原因に対する考え方が変わってきたこともあります。

以前は、ミュータンス菌など特定の「むし歯菌」がむし歯を引き起こすという考え方が中心でした。

現在では、むし歯は特定の細菌だけによって起こるのではなく、糖の摂取などによって口の中が酸性に傾く状態が繰り返されることで、口腔内細菌のバランスが変化し、酸を作る菌や酸に強い菌が優勢になって進行すると考えられるようになっています。

もちろん、ミュータンス菌がむし歯と深く関係していることに変わりはありません。ただ、現在は**「特定のむし歯菌を減らせば、むし歯を防げる」という単純な考え方ではなく、口の中の環境全体を捉える方向へ変わってきています。**

こうした考え方の変化によって、ミュータンス菌を減らすことに重点を置いてきたキシリトールについても、より広い視点からその効果を考える必要があります。

実際、キシリトールガムによるむし歯の減少を示した研究はある一方、2024年に発表された複数の研究をまとめた報告では、研究方法や摂取量などのばらつきが大きく、むし歯予防効果は明確には確認できなかったとされています。[1]

では、ガムを噛むこと自体に意味がないのかというと、そうではありません。

むしろ注目したいのは、キシリトールそのものよりも、ガムを噛むことで唾液の分泌が促されることです。

ガムの大きなメリットは「唾液」

食事をすると、口の中は細菌が作る酸などによってpHが下がり、歯の表面からカルシウムやリン酸などのミネラルが溶け出す「脱灰」が起こります。

これに対して唾液には、

・酸を中和する
・食べかすや糖を洗い流す
・口の中の乾燥を防ぐ
・歯の再石灰化を助ける
・口臭を抑える

といった働きがあります。

なかでも重要なのが再石灰化です。

唾液には再石灰化に必要なカルシウムやリン酸が含まれており、ガムを噛んで唾液が増えると、酸性に傾いた口の中が中和され、歯が再石灰化しやすい環境が整います。[2][3]

また、唾液が増えることで口の中の汚れが洗い流され、乾燥も防ぎやすくなるため、口腔乾燥などに伴う口臭の軽減にもつながります。

シュガーレスガムのむし歯予防効果についても、ガムに含まれる特定の成分以上に、噛むことによる唾液分泌の促進が重要とする報告があります。[2]

「キシリトールを摂るから歯に良い」のではなく、

「シュガーレスガムを噛んで唾液を出し、唾液が本来持つ中和作用や再石灰化作用、洗浄作用を利用する」

そう考える方が実態に近いでしょう。

ストレスの緩和や気分転換に

ガムの作用は、口の中だけにとどまりません。

ガムを噛むことでストレスや不安感が軽減したという研究があります。[4] 一方で、同様の条件で効果が確認されなかった研究もあり、結果は一定していません。

「ガムを噛めばストレスが解消する」とまでは言えないものの、仕事中や運転中のちょっとした気分転換に使うのは悪くないと思います。

私が「邪念を噛み殺している」のも、あながち的外れではなさそうです。

集中力を保つ助けにも

注意力や覚醒度との関係も調べられています。

健康な成人を対象とした研究をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析では、噛むことで持続的注意力がわずかに改善する可能性が示されました。[5]

仕事や勉強、運転の最中にガムを噛むと「少し集中しやすい」と感じる方がいるのは、このためかもしれません。

ただし効果は大きなものではなく、あくまで補助的なものと考えておくのがよいでしょう。

一方で、デメリットもある

ここまで読むと、「それなら、たくさん噛んだ方がいいのでは」と思われるかもしれません。

しかし、本当にお伝えしたいのはむしろここからです。

ガムは軟らかい食べ物ですが、長時間噛み続ければ、歯や顎には何百回、何千回と繰り返し力が加わります。

問題はガムそのものではなく、「長時間」「強く」「習慣的に」噛み続けることで、歯や顎に過剰な力が加わり続けることです。

歯の亀裂や破折のきっかけに

健康な歯なら、普通にガムを噛んだくらいで簡単に割れることはありません。

注意が必要なのは、

・大きな詰め物や被せ物が入っている歯
・神経を取った歯
・残っている歯質が少ない歯
・すでに亀裂が入っている歯

といった歯です。

歯ぎしりや食いしばりが強い方も同様です。

歯の亀裂や破折には、残っている歯質の量と質、そして歯に加わる力が大きく関係します。[6]

すでに弱っている歯に、ガムで何度も大きな力をかけることは避けたいところです。

神経を取った歯が多い方は、特に噛みすぎに注意

とりわけ気をつけていただきたいのが、神経を取った歯が多い方です。

神経を取った歯は、「神経がないから、それだけでもろくなる」という単純な話ではありません。

実際には、むし歯やこれまでの治療によって残っている歯質そのものが少なくなっていることが大きな問題で、構造的にすでに耐久性が落ちている歯が少なくありません。[6][7]

さらに、噛む力に対する感覚が変化する可能性もあります。

根管治療をした歯と、反対側の神経がある歯を比較した研究では、神経を取った歯の方が最大咬合力が有意に高かったと報告されています。[8]

また別の研究では、神経を取った歯は、神経がある歯に比べて振動を感じ取るために、より大きな刺激を必要とすることが示されました。[9]

もちろん、歯に加わる力は歯根膜などでも感知されています。そのため、神経を取った歯が「噛む力を感じなくなる」というわけではありません。

ただ、歯の神経を失うことで感覚情報の一部が変わり、神経がある歯と比べて、知らないうちに強く噛み込んでしまう可能性は考えておく必要があります。

たとえるなら、

「歯質が減って耐久性が落ちているところに、噛む力の“リミッター”まで効きにくくなっているかもしれない」

という状態です。

そこへ、ガムを長時間、強く噛む習慣が加われば、歯への負荷はさらに積み重なります。

特に避けたいのが歯根破折です。

神経を取った歯では歯根破折が問題となることがあり、破折の位置や程度によっては歯を残すことが難しく、抜歯に至ることもあります。[7][10]

神経を取った歯が何本もある、大きな詰め物や被せ物が多い、歯ぎしりや食いしばりが強い――こうした方は、何粒もまとめて噛んだり、長時間強く噛み続けたりする習慣は控えた方がよいでしょう。

顎関節や咀嚼筋への負担

長時間ガムを噛み続けると、顎を動かす筋肉や顎関節に負担がかかります。

咬筋や側頭筋などの筋肉の疲労については、筋トレをやりすぎた後に筋肉痛が出るのと少し似ています。ガムを長時間噛み続けることで筋肉を繰り返し使い、だるさや張り、痛みが出ることがあります。

一方、顎関節そのものの痛みは筋肉痛とは別の問題です。 関節やその周囲に負担が繰り返しかかることで、痛みや違和感が出たり、もともとある顎関節症の症状が悪化したりすることがあります。

健康な方が適度にガムを噛む程度で、それだけで顎関節症になるとは言えません。

ただ、ガムを噛む習慣と顎関節症との関係を検討した2025年の報告では、噛む頻度や時間が増えるほど、咀嚼筋の不快感などの症状が増える傾向を示した研究も報告されています。[11]

・顎が疲れやすい
・口を開けると痛む
・顎を動かすと音がする
・以前から顎関節症を繰り返している

こうした方は、ガムを長時間噛み続けない方がよいでしょう。

知覚過敏を誘発するケースも

ガムを噛んでいて、「歯がしみる」「歯の根元に違和感がある」と感じる方がいます。

歯ぐきが下がって歯根が露出している歯や、歯の根元がすり減っている歯、亀裂がある歯などでは、強く噛んだことをきっかけに、しみる症状が出ることがあります。

ガムそのものが知覚過敏の直接の原因になるわけではありません。

ただ、もともとしみやすい状態の歯に繰り返し強い力が加わることで、亀裂がわずかに開いたり、歯の内部に刺激が伝わりやすくなったりして、症状が表に出るきっかけになることがあります。

噛むとしみる、噛んだ後も違和感が続く。そんなときは、無理にかみ続けないことが大切です。

噛むとしみる、噛んだ後も違和感が続く――そんなときは、無理に噛み続けないことが大切です。

ガムは「歯がぶつかるところまで噛み込まない」

では、どう噛めばよいのでしょうか。

私が患者さんにぜひ意識していただきたいのは、

上下の歯が当たるところまで強く噛み込まないこと

です。

ガムは、歯と歯の間で軽くつぶす程度で十分です。

「しっかり噛んだ方が体に良い」と考えて、毎回「カチッ」と上下の歯がぶつかるところまで噛み込む必要はありません。

唾液を出すことが目的なら、軽い力でリズミカルに噛むだけでも、唾液分泌を促す刺激になります。

ほかにも、

・何粒もまとめて噛まない
・長時間噛み続けない
・いつも同じ側ばかりで噛まない
・痛みや違和感が出たらやめる

といった点を心がけてください。

ガムとの上手な付き合い方

ガムは、使い方によって口腔ケアの助けにもなれば、歯や顎への負担にもなります。

大切なのは、「歯に良いから」と頑張って噛むことではありません。気分転換や唾液を出すために、必要に応じて適度に取り入れるくらいがよいと思います。

強く噛みすぎず、長く噛みすぎない。

ガムとは、そのくらいの距離感で上手に付き合っていきましょう。

参考文献

  1. Ortiz-Sáez B, et al. Is xylitol effective in the prevention of dental caries? A systematic review. J Clin Exp Dent. 2024. PMID: 39544205.
  2. Stookey GK. The effect of saliva on dental caries. J Am Dent Assoc. 2008;139 Suppl:11S-17S. PMID: 18595200.
  3. Dodds MWJ, Chidichimo D, Haas MS. Delivery of active agents from chewing gum for improved remineralization. Adv Dent Res. 2012;24(2):58-62. PMID: 22899681.
  4. Scholey A, Haskell C, Robertson B, et al. Chewing gum alleviates negative mood and reduces cortisol during acute laboratory psychological stress. Physiol Behav. 2009;97(3-4):304-312. PMID: 19268676.
  5. Miquel S, Ben Haddou M, Day JEL. A systematic review and meta-analysis of the effects of mastication on sustained attention in healthy adults. Physiol Behav. 2019;202:101-115. PMID: 30611764.
  6. Yap RC, Alghanem M, Martin N. A narrative review of cracks in teeth: Aetiology, microstructure and diagnostic challenges. J Dent. 2023;138:104683. doi:10.1016/j.jdent.2023.104683. PMID: 37713950.
  7. Tang W, Wu Y, Smales RJ. Identifying and reducing risks for potential fractures in endodontically treated teeth. J Endod. 2010;36(4):609-617. PMID: 20307732.
  8. Awawdeh L, Hemaidat K, Al-Omari W. Higher Maximal Occlusal Bite Force in Endodontically Treated Teeth Versus Vital Contralateral Counterparts. J Endod. 2017;43(6):871-875. PMID: 28359663.
  9. Levy JH, Dong WK. Vibration perception thresholds of human vital and nonvital maxillary incisors. Arch Oral Biol. 2022;139:105426. doi:10.1016/j.archoralbio.2022.105426. PMID: 35430442.
  10. Luo X, Zhang W, Han N, Xue B, Lin Z. Vertical Root Fracture in Endodontically Treated Teeth: Risk Factors and Future Directions. Aust Endod J. 2026;52(2):666-677. doi:10.1111/aej.70090. PMID: 42178859.
  11. Alam MK, et al. Association of temporomandibular disorders and other jaw anomalies in chewing gum users—a systematic review. J Oral Facial Pain Headache. 2025;39(2):35-47. PMID: 41070532.

診療時間

※最終受付は診療時間の30分前(予約制)です


駐車場あり 川崎市宮前区神木1-5-2

地図を見る