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受動喫煙は、子どもの肺や全身の健康だけでなく、歯にも影響する可能性があります。
これまでの研究では、家庭内でタバコ煙にさらされている子どもは、受動喫煙のない子どもに比べて、乳歯のむし歯が多い傾向が報告されています。¹˒²
むし歯には、食生活、歯みがき、フッ化物の使用、唾液の働き、家庭環境など、さまざまな要因が関係します。受動喫煙も、その一つとして考える必要があります。

受動喫煙のある子どもでは、むし歯が多い
日本で約7万7000人の子どもを対象に行われた研究では、生後4か月の時点で家庭内のタバコ煙にさらされていた子どもは、3歳までにむし歯になる割合が高いことが報告されています。¹
3歳までにむし歯が確認された子どもの割合は、家庭内の喫煙状況によって異なっていました。
・喫煙者がいない家庭 → 14.0%
・家族は喫煙するが、子どもの前では吸わない家庭 → 20.0%
・子どもの前でも喫煙する家庭 → 27.6%
子どもがタバコ煙にさらされる程度が大きいほど、むし歯が多くなる傾向がみられました。
さらに、食事や歯みがきなどの影響を調整した後、喫煙者がいない家庭を1とした場合、むし歯の発生リスクは次のようになりました。
・喫煙者がいない家庭 → 1
・家族は喫煙するが、子どもの前では吸わない家庭 → 約1.5倍
・子どもの前でも喫煙する家庭 → 約2倍
子どもがタバコ煙にさらされる程度が大きいほど、むし歯の発生リスクも高くなる傾向が示されました。¹
近年の複数の研究をまとめて分析した報告でも、受動喫煙にさらされた就学前の子どもは、むし歯が多い傾向にあることが示されています。²

なぜ受動喫煙とむし歯が関係するのでしょうか
タバコ煙に含まれるニコチンは、むし歯に関係する細菌の一つであるミュータンスレンサ球菌の増殖を促し、バイオフィルムの形成を活発にすることが実験研究で確認されています。³
また、受動喫煙によって、
・唾液の分泌量や性質が変化する
・口の中の免疫機能が変化する
・歯垢がたまりやすくなる
・歯がつくられる時期の石灰化に影響する
といった可能性も指摘されています。⁴
一方、むし歯には、食事や間食、歯みがき、フッ化物の使用、歯科受診など、さまざまな生活習慣も関係します。
受動喫煙による口の中への影響に、こうした要因が重なることで、むし歯が増える可能性があります。
親の喫煙が子どもの歯ぐきの色に現れることも
受動喫煙は、むし歯だけでなく、子どもの歯ぐきにみられるメラニン色素沈着とも関係することが報告されています。
日本の歯科医院を受診した6~16歳の子ども59人を調べた研究では、親が喫煙していた割合は次のとおりでした。
・歯ぐきにメラニン色素沈着がある子ども → 約70%
・歯ぐきにメラニン色素沈着がない子ども → 35%
歯ぐきに色素沈着がある子どもでは、親が喫煙している割合が約2倍でした。⁵

タバコ煙に含まれるニコチンやベンゾピレンなどの成分が、口腔粘膜や血流を介して歯肉のメラニン細胞を刺激し、色素沈着を促す可能性が考えられています。⁵
ただし、歯ぐきの色は体質や遺伝によっても異なり、色素沈着そのものが病気を意味するわけではありません。
この研究は対象者が59人と少なく、親の喫煙と子どもの歯肉色素沈着との関連を示した研究として捉える必要があります。⁵
加熱式タバコなら影響はない?
加熱式タバコは、紙巻きタバコのようにタバコ葉を燃焼させません。
しかし、使用時に発生するエアロゾルにはニコチンなどが含まれており、周囲への曝露がなくなるわけではありません。
日本で41家族、合計129人を対象に行われた研究では、父親が加熱式タバコを使用する家庭について、非喫煙者である配偶者と子どもの尿中ニコチン代謝物が調べられました。
その結果、加熱式タバコを使用する本人だけでなく、同居する家族もニコチンにさらされる可能性が示されました。⁶
「紙巻きタバコではないから、子どもへの影響はない」とは言えません。
参考文献
- Tanaka S, Shinzawa M, Tokumasu H, et al. Secondhand smoke and incidence of dental caries in deciduous teeth among children in Japan: population based retrospective cohort study. BMJ. 2015;351:h5397. doi:10.1136/bmj.h5397.
- Luo BW, Sun IG, Chan SSC, Chu CH. Secondary Smoking and Early Childhood Caries: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Dental Journal. 2025;75(1):256-265. doi:10.1016/j.identj.2024.08.013.
- Ashkanane A, Gomez GF, Levon JA, Windsor LJ, Eckert GJ, Gregory RL. Effect of nicotine on biofilm formation of Streptococcus mutans isolates from smokers and non-smokers. Journal of Oral Microbiology. 2019;11(1):1662275. doi:10.1080/20002297.2019.1662275.
- 小島美樹.受動喫煙は子どものう蝕の原因となるか?―エビデンスに基づく因果関係の推定―.ザ・クインテッセンス. 2016;35(12):168-177.
- Hanioka T, Tanaka K, Ojima M, Yuuki K. Association of melanin pigmentation in the gingiva of children with parents who smoke. Pediatrics. 2005;116(2):e186-e190. doi:10.1542/peds.2004-2628.
- Onoue A, Inaba Y, Machida K, et al. Association between fathers’ use of heated tobacco products and urinary cotinine concentrations in their spouses and children. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022;19(10):6275. doi:
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