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「以前より硬いものが食べにくい」「お茶や汁物でむせることがある」「滑舌が悪くなった気がする」
こうした口の変化は、年齢のせいとして見過ごされがちです。しかし、口の機能が少しずつ低下しているサインかもしれません。
このような口のささいな衰えを「オーラルフレイル」と呼びます。
歯科診療の際にも、治療中の水や唾液で以前よりむせやすくなった患者さんを見かけることがあります。年齢を重ねると、舌や喉の動き、飲み込む力などが少しずつ変化することがあります。
オーラルフレイルとは
オーラルフレイルとは、噛む、飲み込む、話すといった口の機能に、ささいな衰えが重なり始めた状態です。病気の名前ではなく、健康な状態と、口の機能が大きく低下した状態との間に位置する段階と考えられています。
2024年に日本老年医学会、日本老年歯科医学会、日本サルコペニア・フレイル学会が公表した合同声明では、歯の減少や、食べること、話すことに関わる口の機能のわずかな低下が重なった状態とされています。適切に対応することで、健康な状態へ戻る可能性があることも特徴です。¹
初期には日常生活への大きな支障がなく、「少し食べにくいだけ」「たまたまむせただけ」と受け止められがちです。そのため、本人も周囲も変化に気づかないまま、口の機能の低下が進むことがあります。
こんな変化はありませんか
オーラルフレイルでは、次のような変化がみられることがあります。
- 硬いものを食べにくくなった
- 食べこぼしが増えた
- お茶や汁物でむせることがある
- 口が乾きやすい
- 滑舌が悪くなった
- 食事に時間がかかるようになった
一つの症状だけでオーラルフレイルと決まるわけではありません。大切なのは、以前にはなかった変化が、少しずつ重なっていないかを見ることです。

こうした変化は急に現れるとは限りません。本人が不便を感じない程度にゆっくり進むため、気づかないまま過ごしてしまうことがあります。これも、オーラルフレイルが見逃されやすい理由の一つです。
なぜ気づきにくいのでしょうか
口の働きは、歯だけでなく、舌、唇、頬、唾液など、複数の機能によって支えられています。
どこか一つの働きが弱くなっても、ほかの部分が補うため、初期には不自由を感じにくいことがあります。そのため、本人が気づかないまま、機能の低下が進む可能性があります。²
また、「少し食べにくいだけ」と考え、硬い食品を避けたり、食事の内容を変えたりして対応してしまうこともあります。生活上の工夫によって困らなくなる一方で、口の衰えそのものは見えにくくなります。
オーラルフレイルは、突然始まるものではありません。噛みにくさ、むせ、口の乾燥、話しにくさなど、日常の小さな変化から始まります。
「年齢だから仕方がない」と受け止めてしまうことが、オーラルフレイルを見逃す大きな要因の一つです。以前とは違う状態が続くときは、年齢の問題と決めつけず、口の状態や機能を確認することが大切です。
オーラルフレイルセルフチェック
口の変化はゆっくり進むため、自分では気づきにくいことがあります。そこで、5つの質問から現在の状態を確認してみましょう。
次の質問に「はい」または「いいえ」で答えてください。

5つの項目のうち、2項目以上に該当する場合は、オーラルフレイルと判定されます。
ただし、該当する項目が1つだけであっても、以前より食べにくくなった、むせることが増えた、口が乾きやすくなったなどの変化が続いている場合は、口の機能が低下していないか確認することが大切です。
セルフチェックは、口の変化に気づくための一つの方法です。一方で、自覚症状だけでは分かりにくい変化もあります。
歯科医院では、口の中の状態に加えて、必要に応じて噛む力、舌や唇の動き、飲み込む機能、口の乾燥状態などを確認します。
むし歯や歯周病がないからといって、口の機能にも問題がないとは限りません。以前より食べにくい、むせやすい、話しにくいなどの変化が続いている場合は、歯科医院で相談してください。
参考文献
1.Tanaka T, et al. Consensus statement on “Oral frailty” from the Japan Geriatrics Society, the Japanese Society of Gerodontology, and the Japanese Association on Sarcopenia and Frailty. Geriatr Gerontol Int. 2024;24:1111-1119.
2.松尾浩一郎.オーラルフレイル.The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 2023;60:885-891.
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