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舌の表面にたまる「舌苔(ぜったい)」を清掃することは、口臭予防や口の中を清潔に保つうえで大切です。
でも、舌みがきの効果はそれだけにとどまらないかもしれません。
というのも、舌は食べたり飲み込んだりするだけでなく、呼吸にも関係する役割を持つことがわかってきているからです。
では、その舌を毎日清掃することは、呼吸の働きにも何らかの影響を与えるのでしょうか。
今回は、高齢者を対象にこの疑問を調べた研究をご紹介します。

舌と呼吸には深い関係があります
私たちは普段、呼吸するときに舌を意識することはほとんどありません。
しかし舌は、食べ物を動かして飲み込むだけでなく、舌骨やその周囲の筋肉を介して、呼吸に関係する筋肉ともつながっています。

実際、高齢になると、舌や飲み込む力だけでなく、息を吐き出す力などの呼吸機能も低下しやすくなります。特に身体機能が落ちた高齢者では、これらの機能が互いに影響し合いながら衰えていくことがあります。
そこで、毎日の舌清掃による刺激が、呼吸機能の低下を抑える可能性があるかどうかを調べる研究が行われました。
1年間、舌みがきを続けるとどうなった?
この研究では、介護保険施設に入所している65歳以上の高齢者を対象に調査が行われました。
最終的な解析対象は24人で、舌清掃を行うグループ12人と、通常の口腔ケアのみを行うグループ12人に分けられました。
舌清掃を行うグループでは、通常の口腔ケアに加えて専用のブラシを使い、1日2回、舌の奥から先端に向かって10回程度ブラッシングしました。
これを1年間継続し、呼吸機能や舌の力などを比較しました。
舌みがきを続けたグループでは呼吸機能が保たれた
この研究では、ピーク呼気流量(PEFR)に注目しました。
これは、息を一気に吐き出す力をみる指標です。

1年後、通常の口腔ケアだけを続けたグループでは、PEFRが有意に低下していました。
一方、舌清掃を続けたグループでは、大きな低下はみられませんでした。
つまり、1年間での呼吸機能の低下の程度は、舌清掃を行ったグループのほうが小さかったということです。
舌の力については?
研究では「舌圧」、つまり舌で押す力についても調べています。

舌の力については、舌清掃によるはっきりした違いはみられませんでした。
舌の力には、はっきりした差がみられなかった一方で、呼吸機能には違いがみられた点は興味深い結果です。
なぜ舌をきれいにすることが大切なのか
舌清掃には、もともと口の中の細菌を減らし、清潔に保つという役割があります。
高齢者は舌の表面に舌苔がたまりやすく、そこには多くの細菌が存在します。高齢になると、唾液や細菌を誤って気管に吸い込む「誤嚥」も起こりやすくなるため、口の中を清潔に保つことはとても重要です。


今回の研究は、これに加えてもう一つの可能性を示しました。
舌清掃が、呼吸に関係する機能の維持にもつながるかもしれないということです。
その背景には、高齢期には口腔衛生、飲み込む力、栄養状態、呼吸機能が互いに関係し合っているという事情があります。
これは今回の研究そのものが示したことではありませんが、高齢者では、たとえば次のような悪循環に陥ることがあります。
口の状態が悪くなる
↓
食べにくくなる・食事量が減る
↓
栄養状態が悪くなり、身体全体が弱る
↓
呼吸に関わる筋肉も衰え、息を吐く力が落ちる
↓
誤嚥しても咳で押し出しにくくなる
↓
さらに飲み込む力・食べる力が落ちる
このように、口・食べる力・栄養・呼吸は、それぞれ別々ではなく互いに影響し合っています。
今回の研究は、こうした関係の一部である**「舌清掃と呼吸機能のつながり」**に注目したものといえます。
「舌みがきで呼吸機能が改善する」とは・・・断定できない
今回の結果の解釈には注意が必要です。
解析された人数は24人と小規模で、対象も介護施設に入所する高齢者に限られています。そのため、すべての高齢者や若い人に当てはまるとは限りません。
また、示されたのはあくまで、**「舌清掃を続けた人では呼吸機能の低下が抑えられた可能性がある」**ということです。
呼吸機能そのものが改善することや、誤嚥性肺炎を予防できることまで証明されたわけではありません。

とはいえ、普段何気なく行っている舌清掃が、口の中を清潔にするだけでなく、高齢期の呼吸機能の維持にも関わっているかもしれない――これは興味深い結果です。
舌みがきだけですべてが解決するわけではありませんが、歯みがきや入れ歯の清掃とあわせて、無理のない範囲で続けていくとよいでしょう。
参考文献
泉 蘭依.高齢者に対する舌清掃介入が呼吸機能に与える影響の検討:1年間のランダム化比較試験.口腔衛生学会雑誌.74:2-6,2024.
Tongue Cleaning Maintains Respiratory Function in Older Individuals: A 1-year Randomised Controlled Trial







