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私も妻に助けられて、日々なんとか生きています。今朝も手作りのお弁当を作ってもらいました。感謝の日々です。……今のところ私が誰かを助けている話は出てきませんが、自分のことはさておき、どうやら口腔内細菌の世界にも“助け合い”があるようです。
といっても、細菌たちが「困っている仲間を助けてあげよう」と考えているわけではありません。
口の中では、ある細菌が作り出した物質を別の細菌が利用する、といったことが起こっています。細菌はそれぞれ単独で暮らしているのではなく、周囲の細菌が作り出したものを利用しながら生きているのです。
歯垢は、細菌たちの集合住宅
歯垢(プラーク)は食べかすだと思われることがありますが、実際には細菌が集まってできたものです。
その中では、さまざまな細菌が互いに影響し合いながら、バイオフィルムというひとつのまとまりを作っています。

いわば、歯垢は細菌たちの集合住宅のようなものです。
そこでは、細菌どうしの「物質の受け渡し」が行われています。
ある細菌が作ったものを別の細菌が利用し、そこからまた新たな物質が作られる。そのやり取りが、さらに別の細菌へとつながっていきます。
まさに、
「菌から菌への栄養のリレー」
です。
リレーは歯周病菌も参加
たとえば、Streptococcus gordonii や Veillonella parvula が作り出した物質を、Fusobacterium nucleatum が利用します。
すると、そこで新たな物質が作られ、それによって歯周病との関連が深い Porphyromonas gingivalis のバイオフィルム形成が促されることが分かってきました。
つまり、Porphyromonas gingivalis は単独で悪さをしているのではなく、周囲の細菌との関わりによって、その働きが強まることがあるのです。
どんな細菌がいるのかだけではなく、細菌どうしがどのように関わっているのかも重要なのです。
一種類の歯周病菌だけを見ていても分からない
以前は、Porphyromonas gingivalis など特定の歯周病菌に注目して、歯周病を考えることが中心でした。
しかし現在では、一種類の細菌だけでなく、さまざまな細菌が集まったバイオフィルムの中で、互いにどのような影響を与えているのかという視点も重要になっています。
周囲の細菌が作った物質が別の細菌へ渡り、それが巡り巡って Porphyromonas gingivalis のような歯周病菌のバイオフィルム形成を後押しする。
このように、歯周病菌の働きは、その菌だけで決まるわけではありません。周囲の細菌とのつながりによって、その活動しやすさも変わってきます。
だからこそ、一種類の細菌だけを見るのではなく、細菌の集まりの中で起きている相互作用に注目することが大切なのです。

歯周病治療は、口の中の環境を整えること
さらに、歯周病を考えるときには、細菌だけを見ていればよいわけではありません。
細菌の集まりと、それに対する私たち自身の免疫反応は、互いに影響し合っています。
そして、私たちの免疫反応やプラークコントロールによって口の中の環境が変われば、そこに暮らす細菌の種類や活動性も変わってきます。
つまり、細菌の集まりはいつも同じ状態ではなく、口の中の環境によって変化しているのです。
だからこそ、歯周病治療では、単に歯周病菌を減らすだけでなく、病気が進みにくい口腔内環境をつくり、それを維持していくことが大切になります。
歯みがきや歯間清掃、歯科医院でのケアによるプラークコントロールは、そのための基本です。
さらに、喫煙や糖尿病などの全身状態、生活習慣なども歯周病に影響します。
細菌の種類だけでなく、細菌どうしの関係、口の中の環境、そして私たち自身の体の反応まで含めて考えていく。
口腔内細菌の「助け合い」を知ると、歯周病治療が単なる「悪い菌退治」ではないことが、少し見えてくるのではないでしょうか。

参考文献
- Sakanaka A. 口腔バイオフィルムの種間相互作用が生む代謝変動と歯周病への影響:代謝ネットワークハブとしての Fusobacterium nucleatum. 口腔衛生会誌. 2024;74:7-12.
- Sakanaka A, Kuboniwa M, Shimma S, et al. Fusobacterium nucleatum metabolically integrates commensals and pathogens in oral biofilms. mSystems. 2022;7.







