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歯周病治療では、歯石や細菌のかたまりである「バイオフィルム」を取り除くことが重要です。当院では、超音波スケーラーを使用する際の洗浄水として、pH4.0のオゾン水を補助的に用いています。
ただし、オゾン水そのものが治療の主役だと考えているわけではありません。最も重要なのは、歯石やバイオフィルムを機械的に破壊・除去することです。
オゾン水を使用することで歯周病治療の効果が高くなる可能性
超音波スケーラーでは、水を流しながら歯石やバイオフィルムを除去します。このとき、普通の水ではなく抗菌作用のある薬液を用いれば、治療効果がさらに高くなるようにも思えます。

実際に、ポビドンヨードやクロルヘキシジン、過酸化水素などを使用した研究が行われています。
しかし、これまでの臨床研究では、こうした薬液を用いても、歯周ポケットの深さや出血などの治療成績が大きく改善するとは限らないことが報告されています。オゾン水についても、使用しただけで治療成績が大きく向上するとは考えていません。
その理由は、歯周病菌がバイオフィルムを形成しているからです。
多種類の細菌が集まり、粘着性のある物質に包まれた集合体を作って生活しているのがバイオフィルムです。その内部に存在する細菌には、抗菌作用のある薬液が十分に作用しにくいという特徴があります。
そのため、歯周病菌に薬剤をより効果的に作用させるには、まず超音波スケーラーなどを用いてバイオフィルムを物理的に破壊・除去することが重要になります。

当院がオゾン水を使用する理由
当院では、超音波スケーラーによって歯石やバイオフィルムを機械的に破壊・除去することを前提として、洗浄水にpH4.0のオゾン水を使用しています。
超音波によってバイオフィルムが破壊されることで、その内部にいた細菌が露出したり、周囲に遊離したりします。
当院では、こうした細菌に対する補助的な抗菌作用を期待して、オゾン水を使用しています。
歯石やバイオフィルムを機械的に除去する際の洗浄水として、抗菌作用を持つ水を使用することには、一定の合理性があると当院では考えています。
殺菌効果
オゾン水は強い酸化作用により、幅広い微生物に作用することが知られています。細菌ではグラム陽性菌・グラム陰性菌の双方に作用し、真菌や一部のウイルスにも不活化作用が報告されています。

歯科領域で報告されている代表例としては、
- Streptococcus mutans(ミュータンス菌)
- Enterococcus faecalis
- Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
- Escherichia coli(大腸菌)
- Candida albicans(カンジダ菌)
- 歯垢中の嫌気性細菌
- 一部のウイルス
などがあります。
実験研究では、オゾン水によってこれらの微生物の数が減少したり、ウイルスの感染性が低下したりすることが報告されています。
創傷治癒を補助する可能性
オゾン水については、抗菌作用だけでなく、創傷治癒を補助する可能性を示した研究も報告されています。
口腔内の創傷や歯周治療後の治癒に関して、オゾン療法を併用することで良好な結果を認めた研究があります。また、歯周治療にオゾン水を併用することで、歯周ポケットの深さや炎症に関する指標の改善を認めた報告もあります。
一方で、通常の水と比べて明確な上乗せ効果を認めなかった研究もあり、その効果についてはまだ一定した結論には至っていません。
そのため当院では、創傷治癒を主目的として使用するのではなく、抗菌作用とあわせて「治癒を補助する可能性もある」という位置づけでオゾン水を使用しています。
残留しにくい
オゾンは時間の経過とともに分解され、最終的には酸素などに変化します。
そのため、一般的な消毒薬のように薬剤成分が長く残留しにくいという特徴があります。分解速度は使用条件によって異なりますが、比較的短時間でオゾン濃度は低下していきます。
抗菌作用を利用しながらオゾンを長く残留さないこと、そして環境への負荷が比較的小さいことも、当院が補助的な洗浄水として採用している理由です。
脱臭作用
歯周治療では、歯周ポケット内の汚れや細菌、出血などに伴って独特の臭気が生じることがあります。
オゾンには、臭いの原因となる物質を酸化・分解する性質があるため、当院では診療中に生じる臭いの軽減も期待しています。
さらに、治療中は口腔外バキュームも併用しています。
口腔外バキュームは、治療中に発生する飛沫やエアロゾル、臭気などを患者さんの口元で吸引する装置です。これにより、治療中の臭いが診療室内に広がり、ほかの患者さんに不快感を与えることをできるだけ防いでいます。
オゾン水による洗浄と口腔外バキュームを併用することで、院内をできるだけ清潔で快適な環境に保つことも大切にしています。
こうした特徴を活かして、オゾン水は医療分野だけでなく、食品衛生や農業・畜産分野などでも利用されています。養鶏場、養豚場、牛舎、食品工場などでは、設備や器具の洗浄に使用されています。

大切なのは、バイオフィルムを除去すること
ここは誤解していただきたくないところです。オゾン水を使えば歯周病が治るわけではありません。
歯周病治療の中心は、歯石を除去すること、バイオフィルムを破壊・除去すること、患者さん自身の歯磨きによって再びバイオフィルムを増やさないこと、そして定期的にメインテナンスを続けることです。

当院では、こうした基本的な歯周病治療を丁寧に行ったうえで、治療中の細菌量を少しでも減らすことを期待して、オゾン水を補助的に使用しています。
「強い薬で殺菌すればよい」という考え方ではなく、まずバイオフィルムを物理的に取り除き、その治療を少しでも補助するためにオゾン水を使う。
これが、当院におけるオゾン水の位置づけです。
参考文献
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