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2026.08.24
お口の健康
低血糖時の補食とむし歯予防

低血糖が起きたときには、糖分を含む食品による補食が必要になります。

一方、歯科では、糖分を摂る回数が増えるほど、むし歯のリスクが高くなると説明します。

そのため、糖尿病の患者さんやご家族の中には、

「低血糖のために補食を繰り返していると、むし歯にならないだろうか」

と心配される方もいると思います。

私の次男は、1歳で1型糖尿病を発症しました。

幼いころは夜間に低血糖を起こすこともあり、低血糖時用のレスキューやラムネを与えることが頻繁にありました。

寝ぼけた状態では歯みがきもできず、ラムネを口にしたあと、そのまま眠りにつくことが毎日のようにありました。

私は父親としてその状況を見ながら、歯科医として、

「夜中に糖分を摂ったあと、どのように歯を守ればよいのか」

を考えてきました。

低血糖時は、血糖の回復が最優先

ご存じのとおり、低血糖は、ときに命に関わる状態となることがあります。

否応なしに低血糖時の補食は、むし歯予防よりも優先されます。

低血糖への具体的な対応は、糖尿病の主治医から指示された方法に従ってください。

考えるべきなのは、補食を制限することではなく、必要な補食を続けながら、どのようにむし歯のリスクを減らすかということです。

基本はフッ化物配合歯磨剤を1日2回以上使用すること

わが家で最も重視していたのは、フッ化物配合歯磨剤を使った毎日の歯みがきです。

年齢に合った濃度と量のフッ化物配合歯磨剤を使用し、就寝前を含めて1日2回以上歯を磨くことが、むし歯予防の基本になります。

夜間に補食をしたあと、その都度歯を磨けなかったとしても、朝と就寝前の歯みがきを継続し、日頃からフッ化物を歯に作用させておくことには大きな意味があります。

就寝中の補食時でのMIペーストの活用

次男が幼かったころ、夜間の低血糖に対して、わが家で行っていた対応をご紹介します。

就寝中に低血糖アラームが鳴り、補食を行った際は、MIペーストを歯面へ塗ることを一連の対応としていました。

夜間の寝ぼけた状態では歯みがきやうがいが難しかったため、酸性に傾いた口の中を少しでも中性に近づける効果を期待して、MIペーストを活用していました。

MIペーストは、牛乳由来のCPP-ACPという成分を含む口腔ケア製品です。カルシウムやリンを歯の表面に供給するほか、酸性に傾いた口の中を中性方向へ戻す作用や、酸性になりにくくする緩衝作用があります。

次男は幼少期に夜間低血糖による補食を繰り返していましたが、現在までむし歯はありません。もちろん、これはMIペーストだけの効果とは考えていません。が,多少の効果はあったのかな・・と思っています。

フッ化物配合歯磨剤を使った毎日の歯みがきや、家庭で口の中を確認できる環境、定期的な歯科管理など、複数の要因が関係していると考えています。

日頃から予防を続けることで、必要な補食を行いながらでも、むし歯のリスクを減らすことは可能です。

※注意 MIペーストには牛乳由来成分が含まれているため、牛乳由来成分にアレルギーがある方は使用できません。

低血糖の回数を減らすことは、むし歯予防にもつながります

低血糖を繰り返すと、そのたびに糖分を補給する必要があり、歯が糖分に触れる回数も増えます。そのため、低血糖の回数を減らすことは、全身の健康だけでなく、むし歯のリスクを抑えるうえでも重要です。

胃切除後に低血糖を起こす場合

補食が必要になるのは、糖尿病の患者さんだけではありません。

胃切除後には、食後に糖質が急速に吸収され、その反応として体内のインスリンが過剰に分泌されることで、低血糖を起こすことがあります。これは後期ダンピング症候群と呼ばれます。

胃切除後の補食や食事の取り方については、治療を受けている医療機関の指示に従うことが大切です。

私の臨床では、胃切除後に低血糖への対応や栄養維持のため、補食を続けている患者さんを比較的多く経験します。そのような患者さんでは、補食の回数が増えることに加え、加齢による唾液の減少や根面露出なども重なり、多数のむし歯がみられることがあります。

補食が必要な高齢者は、さらに注意が必要です

高齢者では、補食の回数が増えることに加え、次のようなむし歯リスクが重なることがあります。

・歯ぐきが下がり、歯の根が露出している
・唾液の分泌量が少ない
・口の乾燥に関係する薬を複数服用している
・手指の機能が低下し、歯みがきが難しい
・義歯や多数の詰め物、被せ物がある
・軟らかく、口の中に残りやすい食品を少量ずつ食べている

歯の根の部分は、エナメル質に覆われた歯冠部よりも酸に弱いため、補食の回数が多くなると根面カリエスが進行しやすくなります。

そのため、高齢者では、単に「甘いものを控えましょう」と伝えるだけでは不十分です。

補食が必要な理由や回数、食品の内容、唾液量、清掃状態、露出した根面などを確認し、一人ひとりに合わせた予防を考える必要があります。

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