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2026.08.31
お口の健康
総入れ歯でも口腔ケアが必要な理由|歯がなくても歯周病菌は存在します

総入れ歯の方にも口腔ケアが必要な理由

歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨に起こる病気です。

そのため、すべての歯を失えば、歯周病そのものは起こらなくなります。

しかし、歯周病に関係する細菌まで、口の中から消えるわけではありません。

研究では、歯が1本もない無歯顎の方でも、口の中や義歯から複数の歯周病関連細菌が検出されています。¹

歯がなくなれば存在しないように思われる歯周病菌が、なぜ口の中に残るのでしょうか。

歯周病菌は歯の周りだけにいるわけではありません

歯周病菌は、歯や歯根の表面、歯と歯ぐきの境目だけに存在するわけではありません。

研究では、歯が1本もない方でも、次のような場所から歯周病菌が検出されています。¹

  • 頬の粘膜(頬や唇の内側)
  • 歯がなくなったあとの歯ぐき
  • 唾液
  • 義歯

特に、舌の表面に付着する舌苔は、歯周病菌が存在する場所の一つです。

高齢者を対象とした研究では、無歯顎の方の舌苔からも歯周病関連細菌が検出されています。また、舌苔の付着状態と歯周病菌の検出率との間に関連があることも報告されています。¹ ²

また、歯周病菌の中には、歯や口の表面に付着するだけでなく、細胞内へ侵入する性質をもつものもあります。

例えば、代表的な歯周病菌の一つである**Porphyromonas gingivalis(P.g.菌)**は、歯ぐきの細胞内へ侵入できることが報告されています。³

このような性質も、歯を失ったあとに一部の歯周病菌が口の中に残る理由の一つである可能性があります。

総入れ歯にも細菌のかたまりが形成されます

総入れ歯の表面、特に歯ぐきに接する面には、「デンチャープラーク」と呼ばれる細菌のかたまりが形成されます。

電子顕微鏡を用いた研究でも、無歯顎の方が使用する総入れ歯の内面に、多数の細菌を含むプラークが形成されることが確認されています。⁴

総入れ歯を装着している方を対象とした研究では、義歯に加えて、口の粘膜からも複数の歯周病菌が検出されています。¹

つまり、義歯も細菌が付着する新たな場所になることがあります。

歯がなくても誤嚥性肺炎のリスクはあります

高齢になると、飲み込む機能が低下し、唾液や口の中の細菌が誤って気道へ入る「誤嚥」が起こりやすくなります。

口の中の細菌を含んだ唾液が肺へ入ると、誤嚥性肺炎につながることがあります。

歯が1本もなくても、舌や歯ぐき、唾液、義歯などには細菌が存在します。そのため、歯をすべて失ったからといって、口の中の細菌に関連する肺炎のリスクがなくなるわけではありません。

高齢者施設などを対象とした研究では、歯や義歯を含む口腔ケアが、肺炎の予防に役立つ可能性が報告されています。⁵

歯がなくても毎日の口腔ケアは必要です

歯がなくなれば、歯周病そのものは起こらなくなります。

しかし、歯周病菌を含む細菌は口の中に残り、舌や歯ぐき、義歯などに付着することがあります。

総入れ歯の方も、次のようなケアを続けることが大切です。

  • 義歯を外し、義歯用ブラシで毎日清掃する
  • 義歯洗浄剤を併用する
  • 舌を傷つけないように、やさしく清掃する
  • 歯がなくなったあとの歯ぐきや頬の内側も清潔に保つ
  • 就寝時の義歯の取り扱いについて、歯科医院の指示を受ける
  • 定期的に歯科医院で義歯と口の中の状態を確認する

歯がなくても、口腔ケアが不要になるわけではありません。

義歯だけでなく、舌や歯ぐきなどを含めて口の中全体を清潔に保つことが、細菌の増加を抑え、口と全身の健康を守ることにつながります。

参考文献

  1. Sachdeo A, Haffajee AD, Socransky SS. Biofilms in the edentulous oral cavity. J Prosthodont. 2008;17(5):348-356.
    ※無歯顎者の口腔内各部位および義歯における細菌の検出に関する研究。
  2. Kishi M, et al. Relationship between oral status and prevalence of periodontopathic bacteria on the tongues of elderly individuals. J Med Microbiol. 2010;59(Pt 11):1354-1359. PMID: 20688951. 
  3. Lamont RJ, Chan A, Belton CM, Izutsu KT, Vasel D, Weinberg A. Porphyromonas gingivalis invasion of gingival epithelial cells. Infect Immun. 1995;63(10):3878-3885. PMID: 7558295. 
  4. Theilade J, Budtz-Jørgensen E. Electron microscopic study of denture plaque. J Biol Buccale. 1980;8(4):287-297. PMID: 6938511. 
  5. Sjögren P, Nilsson E, Forsell M, Johansson O, Hoogstraate J. A systematic review of the preventive effect of oral hygiene on pneumonia and respiratory tract infection in elderly people in hospitals and nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2008;56(11):2124-2130.
    口腔ケアと高齢者の肺炎予防に関する研究については、複数の無作為化試験を検討したレビューもあります。

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