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2026.08.27
お口の健康
歯周病菌は家族やペットからうつる?

むし歯菌が唾液を介して伝わると聞き、孫と同じ箸を使わないようにしている方もいます。歯周病菌も同じように、家族やパートナーへうつるのでしょうか。

結論からいうと、歯周病に関係する細菌は、人から人へ伝わることがあります。犬や猫などのペットと人との間でも、歯周病菌が伝わることが報告されています。

ただし、細菌が口の中に入ったことと、歯周病を発症することは同じではありません。

現在では、特定の歯周病菌に感染しただけで歯周病になるのではなく、口の中の微生物のバランスが崩れ、そこに体の免疫反応が重なることで発症・進行すると考えられています。

歯周病に関係する細菌は唾液を介してうつります

家族やパートナーは、食事や日常生活を長く共にします。そのため、唾液を介して口腔内の細菌が行き来し、似た種類の歯周病菌を保有することがあります。

母親から歯周病菌が検出された場合、その子どもからも同じ細菌が検出されやすかったという日本の研究があります。また、成人では家族間だけでなく、長期間生活を共にするパートナー間で、同じ遺伝子型の細菌が見つかった例も報告されています。

一方、重度の歯周病との関係が深いとされる Porphyromonas gingivalis は、幼い子どもから頻繁に検出される細菌ではありません。年齢が上がり、歯肉溝や歯周ポケットなど、その細菌が生息しやすい環境ができるにつれて検出されやすくなります。

感染より重要なのは「ディスバイオシス」です

口の中には、細菌を中心に、真菌やウイルスなど多くの微生物が存在しています。これらは互いに影響し合いながら、一つの生態系をつくっています。

健康な状態では、口の中の微生物と体の免疫反応との間に一定のバランスが保たれています。歯周病に関係する細菌が存在していても、このバランスが維持されていれば、すぐに歯周病を発症するわけではありません。

このバランスが崩れるきっかけの一つが、歯垢の蓄積です。ただし、歯垢の量だけで歯周病のなりやすさが決まるわけではありません。

同じ程度に歯垢が付着していても、歯ぐきに強い炎症が起こる人もいれば、歯周組織の破壊が比較的少ない人もいます。反対に、歯垢がそれほど多くないように見えても、歯周病が進みやすい人もいます。

この違いには、細菌に対する免疫反応の個人差が関係しています。免疫の働きや歯周病へのなりやすさは、次のような要因の影響を受けます。

・遺伝的な要因

・加齢

・糖尿病

・喫煙

・体調の変化

・栄養状態

服用している薬

免疫は弱くなるだけでなく、過剰に反応することで炎症が長引き、歯周組織の破壊につながることもあります。

こうした免疫反応の変化に加えて、口腔内の環境が変化すると、それまで少数だった歯周病菌が増えたり、細菌同士の働き方が変わったりします。その結果、バイオフィルム全体の病原性が高まり、さらに炎症が起こりやすくなります。

このように、口の中の微生物の種類や割合、働きと、体の免疫反応とのバランスが崩れた状態を、ディスバイオシスといいます。

以前は、特定の強い歯周病菌に感染することで歯周病が始まると説明されることが多くありました。しかし現在では、複数の微生物からなるバイオフィルムと、その人自身の免疫反応が互いに影響し合うことで、歯周病が発症・進行すると考えられています。

つまり、家族やペットから歯周病菌がうつったとしても、それだけで歯周病になるわけではありません。発症や進行を左右するのは、菌の有無だけでなく、口の中の微生物と体の免疫反応とのバランスです。

ただし、家族や近親者に進行した歯周病の人がいる場合は注意が必要です。歯周病菌が家庭内で伝わる可能性があるだけでなく、歯周病へのなりやすさに関わる遺伝的背景や、生活習慣を共有していることもあるためです。

ペットからも歯周病菌がうつることがあります

犬や猫にも人間と同様に歯周病があります。

犬や猫の口の中には、人の歯周病との関係が深い P. gingivalis に加え、動物の歯周病との関係が深い Porphyromonas gulae などの細菌が存在します。

研究では、飼い主とペットから同じ遺伝子型、または非常に近い歯周病菌が検出されており、動物と人との間で細菌が伝わることが示されています。

ただし、どちらからどちらへ伝わったのか、ペット由来の細菌が人の歯周病を実際に発症させるのかについては、まだ十分に分かっていません。

ペット自身の歯周病を放置しないことも重要です。口臭や歯ぐきの出血、歯石が目立つ場合は、動物病院で口の中を診てもらう必要があります。

ペットを遠ざけたり、必要以上に恐れたりする必要はありません。一方で、食べ物を口移しで与えることや、口の周りを繰り返しなめさせる習慣は避けた方がよいでしょう。これは歯周病菌だけでなく、ほかの病原体による感染を防ぐうえでも大切です。

感染を気にするより、口腔環境と体調管理が大切です

歯周病菌との接触を、生涯にわたって完全に避けることは現実的ではありません。

孫と一度同じ箸を使った、パートナーとキスをした、ペットに顔をなめられたというだけで、歯周病になるわけではありません。菌の感染を過度に恐れて、家族やペットとの自然なスキンシップまで控える必要はありません。

歯周病は、「歯周病菌をもらったから発症する病気」ではないからです。発症や進行には、口の中の微生物と体の免疫反応のバランスが関係します。

そのため、感染を過度に気にするよりも、歯垢を長期間残さず、口の中の微生物のバランスが崩れにくい環境を保つことが重要です。

毎日の歯みがきや歯間清掃に加え、歯石や深い歯周ポケットがある場合は、歯科医院で治療を受ける必要があります。家族の中に進行した歯周病の人がいる場合は、家族やパートナーも一度検査を受けておくとよいでしょう。

一方で、歯周病へのなりやすさには、遺伝的な影響を受けた免疫反応の特徴も関係します。しかし、この特徴そのものを大きく変えることは簡単ではありません。

だからこそ、十分な睡眠、栄養状態の維持、禁煙、糖尿病の管理などによって、免疫と口腔内の微生物のバランスを崩さない生活が大切になります。

歯周病予防で目指すのは、免疫を無理に強くすることではありません。毎日の口腔ケアと体調管理によって、ディスバイオシスを起こしにくい状態を保つことです。

参考文献

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  2. Cortelli JR, et al. Etiological analysis of initial colonization of periodontal pathogens in oral cavity. J Clin Microbiol.2008;46:1322-1329
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