サブメインビジュアル

かんたんネット予約

予約

044-855-3060

診療時間

2026.10.26
お口の健康
タバコが歯周病治療に与える影響

「タバコを吸っていると歯周病は治らない」と聞いたことはないでしょうか。

喫煙が歯周病の大きな危険因子であることは、多くの研究で明らかになっています。しかし、**喫煙者でも歯周病は治療によって改善します。**ただし、非喫煙者に比べて改善の幅が小さく、治療後の経過にも注意が必要です。

では、タバコは歯周病の治療に、具体的にどのような影響を与えるのでしょうか。

喫煙によって歯周病治療の効果が低下する理由

喫煙は歯ぐきの血管や免疫機能に悪影響を与える

歯周病治療の基本は、患者さんご自身による毎日の適切なブラッシングです。そのうえで、歯科医院では歯周ポケットの深い部分に付着した歯石を除去し、バイオフィルムを破壊するSRP(スケーリング・ルートプレーニング)を中心に治療を進めます。

こうした治療によって細菌叢のバランスが崩れた状態(ディスバイオーシス)が改善し、過剰な免疫・炎症反応が落ち着くことで、歯ぐきの炎症や歯を支える骨の吸収が抑えられます。

この回復を支えているのが、歯ぐきの血流と免疫機能です。血液は酸素や栄養を運ぶだけでなく、免疫細胞が組織で働くためにも重要な役割を果たしています。

しかし、喫煙は歯ぐきの血管や免疫機能に悪影響を与え、組織の修復を妨げます。そのため、適切な治療を行っても、歯周組織が十分に回復しにくくなると考えられています。

さらに、喫煙者の歯根面からニコチンが検出された研究もあります。抜去歯を用いた実験では、清掃後の歯根面にニコチンやその代謝物であるコチニンを再び作用させると、血液成分の付着が妨げられることが示されています。SRP後も喫煙を続けることは、歯根面での治癒過程にも悪影響を及ぼす可能性があります。

実際、喫煙者でもSRPによって歯ぐきの炎症は改善し、歯周ポケットも浅くなります。ただし、17件の研究を統合した解析では、非喫煙者に比べてポケットの減少量が平均0.33mm小さく、歯を支える組織の付着状態の改善も小さいと報告されています。

出血しにくく、気づかないうちに進行する

歯周病では一般に、歯ぐきが赤く腫れたり、歯みがきで出血したりします。ところが喫煙者では、タバコの成分が歯ぐきの血管や炎症反応に影響するため、病気が進行していても出血や腫れが目立たないことがあります。

そのため、自覚症状がないまま歯周病が進行し、歯がぐらつくようになって初めて異常に気づくこともあります。

この段階では、すでに歯を支える骨の吸収が進んでいる場合が多く、治療によって炎症を改善できても、失われた骨や歯周組織を元の状態に戻すことは容易ではありません。

喫煙によって歯周組織の治癒が妨げられるだけでなく、症状が目立たず、治療の開始が遅れてしまうことも、治療結果が悪くなる原因の一つと考えられます。

歯ぐきが硬くなり、引き締まりにくい

長年喫煙している方では、歯ぐきが硬く、線維性の性状を示すことがあります。喫煙は歯ぐき内のコラーゲン代謝や細胞の働きにも影響し、歯ぐきの性状を変化させます。

禁煙すると歯ぐきの状態は徐々に変化していきますが、長年の喫煙で生じた歯ぐきの性状は、すぐには元に戻りません。実際の診療でも、禁煙後、長期間にわたって硬い歯ぐきの状態が残っている患者さんを経験します。

通常は、治療で炎症が治まると腫れていた歯ぐきが引き締まり、歯周ポケットが浅くなります。しかし、喫煙者では歯ぐきの線維性変化に加え、組織内の血管密度や血管の太さが変化することも報告されています。こうした組織の特徴も関係すると考えられ、炎症が改善しても歯ぐきが十分に収縮せず、深いポケットが残る場合があります。

このように深い歯周ポケットが残ると、治療によっていったんバイオフィルムを破壊しても、その内部に再びプラークが停滞しやすくなります。特に日常のプラークコントロールが不十分な場合には、その影響が大きくなり、歯周病の再発や進行につながりやすくなります。

歯周外科治療でも効果が得られにくい

深い歯周ポケットでは、SRPだけで歯根面に付着した歯石を十分に取り除くことが難しい場合があります。そのような場合、歯ぐきを切開し、歯根面を直接確認しながら歯石やバイオフィルムを除去する歯周外科治療が次の選択肢となります。

しかし、喫煙者では、こうした外科治療でも十分な効果が得られにくい傾向があります。喫煙によって血管や、組織を修復する細胞の働きが妨げられ、手術後の治癒に悪影響が及ぶためと考えられています。

実際、喫煙者では非喫煙者に比べて、手術後の歯周ポケットの減少量や歯周組織の付着状態の改善が小さいことが報告されています。

治療後のメインテナンスが重要

このように、喫煙者では歯周病の再発・進行リスクが高いため、治療後もリスクを徹底して管理する必要があります。

メインテナンスでは、歯周ポケットの深さや出血の有無、プラークコントロールの状態などを継続的に確認します。必要に応じて、歯を支える骨の状態も評価します。

特に喫煙を続けている方や深い歯周ポケットが残っている方では、**メインテナンスの間隔を3か月程度、あるいはさらに短く設定することもあります。**ただし、間隔は一律ではなく、それぞれの患者さんのリスクに応じて判断します。

また、メインテナンスだけでは病状を安定させられない場合には、追加の歯周治療も検討します。

禁煙できなくても、治療を諦めないでください

禁煙は歯周病治療において非常に重要です。しかし、禁煙できないからといって治療を諦める必要はありません。喫煙を続けている方でも、適切な歯周治療と継続的なメインテナンスによって、炎症を改善し、病気の進行を抑えることは可能です。

そのうえで、より良い治療結果を得て、ご自身の歯を長く守るために、禁煙もぜひ検討していただきたいと思います。禁煙した方では、歯周治療の効果が高まることも報告されています。

参考文献

  1. Chang J, et al. The impact of smoking on non-surgical periodontal therapy: A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2021. DOI: 10.1111/jcpe.13384
  2. Cuff MJA, et al. The Presence of Nicotine on Root Surfaces of Periodontally Diseased Teeth in Smokers. J Periodontol. 1989. DOI: 10.1902/jop.1989.60.10.564
  3. Pinto SCS, et al. Influence of nicotine and cotinine impregnation on the first step of periodontal regeneration: clot stabilization. J Contemp Dent Pract. 2013. DOI: 10.5005/jp-journals-10024-1448
  4. Kotsakis GA, et al. Impact of cigarette smoking on clinical outcomes of periodontal flap surgical procedures: A systematic review and meta-analysis. J Periodontol. 2015. DOI: 10.1902/jop.2014.140452
  5. Leite FRM, et al. Impact of smoking cessation on periodontitis: A systematic review and meta-analysis of prospective longitudinal observational and interventional studies. Nicotine Tob Res. 2019. DOI: 10.1093/ntr/nty147
  6. Adelia AH, et al. Gingival Blood Vessels in Smokers and Nonsmokers: A Scoping Review. Eur J Dent. 2026. DOI: 10.1055/s-0045-1809913
  7. Sanz M, et al. Treatment of stage I–III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2020. DOI: 10.1111/jcpe.13290

診療時間

※最終受付は診療時間の30分前(予約制)です


駐車場あり 川崎市宮前区神木1-5-2

地図を見る