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2026.10.29
お口の健康
子どもが歯みがき粉を嫌がる。無理に使わせるべき?――むし歯予防で本当に大切なこと

「子どもが歯みがき粉を嫌がるのですが、使わせた方がよいのでしょうか」

このような相談を受けることがあります。

歯みがき粉の味やにおい、泡立ち、口の中に広がる感覚が苦手なお子さんは珍しくありません。歯ブラシだけなら平気なのに、歯みがき粉をつけると嫌がってしまう。そんなケースも見受けられます。

では、むし歯予防のためには、嫌がっていても歯みがき粉を使わせた方がよいのでしょうか。

フッ化物配合歯磨剤のむし歯予防効果は確か

現在、市販されている歯みがき粉の多くには、むし歯予防に効果のあるフッ化物(フッ素)が配合されています。

フッ化物には、歯の表面からカルシウムなどの成分が溶け出す「脱灰」を抑え、失われた成分が歯に戻る「再石灰化」を促す働きがあります。

その効果は、多くの研究によって確かめられてきました。

世界各国の研究をまとめた2010年の分析では、フッ化物配合歯磨剤を使用すると、フッ化物を含まない歯みがき粉に比べて、子どもの永久歯におけるむし歯の増加が平均約23%抑えられることが示されました。その後、2019年には対象研究を96件に増やした改訂版が発表され、むし歯予防効果が改めて確認されました。

こうした世界的な研究成果を踏まえ、日本でも2023年に、日本小児歯科学会など4つの専門学会が、フッ化物配合歯磨剤の使用方法を示しました。就寝前を含む1日2回、年齢に応じた以下の濃度と使用量で使うことを推奨しています。

※ppmはフッ化物の濃度を表す単位です。

歯みがきそのものが嫌いになっては本末転倒

一方、科学的に効果があるからといって、すべてのお子さんに同じ方法を求めることが適切とは限りません。

歯みがき粉を嫌がるお子さんに無理に使わせようとして、歯みがきそのものが嫌いになってしまっては本末転倒です。

まず重視したいのは、歯みがきを毎日の生活習慣の一つとして自然に定着させることです。

私の臨床経験では、小さい頃に歯みがき粉を嫌がっていたお子さんでも、成長とともに感覚や好みが変化し、抵抗なく使えるようになることが少なくありません。

また、泡立ちの少ない歯みがき粉や、刺激の少ないジェルタイプに変えることで、使えるようになる場合もあります。

フッ化物配合歯磨剤は、むし歯予防のためにできるだけ使いたいものです。ただ、どうしても嫌がる場合は、まず歯ブラシで磨く習慣を続けながら、無理のない範囲で少しずつ歯みがき粉に慣れていくことをお勧めします。

むし歯の多いお子さんでは、積極的な予防を

例えば、5歳くらいですでに3〜4本以上のむし歯があるお子さんでは、より積極的な予防が必要です。むし歯のリスクが高く、歯みがき粉に慣れるのを待っている間にも、新たなむし歯ができるおそれがあるためです。

そこで選択肢の一つとなるのが、フッ化物を含む水溶液で口をすすぐ「フッ化物洗口」です。

当院で使用することがある「オラブリス」という洗口剤は、味やにおいによる刺激が少なく、私の経験では、歯みがき粉が苦手なお子さんにも比較的受け入れられやすい印象があります。

また、歯科医院で行う高濃度フッ化物塗布も有効な予防方法です。(もっとも、こちらも嫌がるお子さんは少なくありませんが……)

歯科医師と相談しながら、予防効果だけでなく、お子さんが無理なく受け入れ、継続できる予防方法を選ぶとよいでしょう。

そして、こうした予防処置をきっかけに、定期的に歯科医院でお口の状態を確認することにも大きな意味があります。

歯の生え方や清掃状態を継続的に確認し、その時々に必要な予防対策を考えていく。私は、こうした経過観察の機会を得られることが、処置そのもの以上に重要だと考えています。

何より重視したいのは食生活

フッ化物配合歯磨剤には確かなむし歯予防効果がありますが、私がむし歯予防の基本として何より重視しているのは、日々の食生活です。

むし歯は、口の中の細菌が糖分を利用して酸をつくり、その酸によって歯の表面が溶かされることで発生します。

糖分の摂取量だけでなく、摂取する頻度もむし歯のリスクに関係します。特に、お菓子のだらだら食べや、ジュース・スポーツドリンクなどの糖分を含む飲み物を頻繁に飲む習慣には注意が必要です。

もちろん、甘いものを一切食べてはいけないという話ではありません。

大切なのは、食べ方や飲み方を工夫することです。例えば、おやつの時間を決める、糖分を含む飲み物を日常的な水分補給の中心にしない、食事と間食の間隔をあける、といったことが挙げられます。

こうした日々の積み重ねが、むし歯になりにくい口の中の環境を保つことにつながります。

フッ化物配合歯磨剤を使用していても、食生活に問題があればむし歯になることがあります。しかし、フッ化物には食生活の改善とは別の予防効果があり、特にむし歯のリスクが高いお子さんでは積極的に活用したいものです。

食生活と歯みがき習慣を土台に、お子さんのむし歯のリスクに応じて、予防処置を上手に組み合わせる。これが、私の考えるむし歯予防の基本です。

参考文献・資料

  1. Walsh T, et al. Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries in children and adolescents. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2010; CD007868.
  2. Walsh T, et al. Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2019; CD007868.
  3. 日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会.4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法.2023年.
  4. World Health Organization. Sugars and dental caries. 2025.

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