ブログ・お知らせ
「歯磨きをしないとハゲる?」
そんな話を聞いたら、思わず歯ブラシを手に取りたくなるかもしれません。
2026年10月20日放送の『マツコの知らない世界』では、抜け毛に関する話題が取り上げられました。実は、歯周病と薄毛の関係については、医学的な研究も行われています。
ただし、薄毛の人が歯を磨いていないわけではありませんし、丁寧に歯を磨いていれば髪が抜けないわけでもありません。歯磨きだけで薄毛を防げるなら、歯科医師はみんなフサフサのはずです。うちの父を見れば、そう単純な話ではないことがよくわかります。
では、歯周病と脱毛症の関係はどこまで分かっているのでしょうか?
歯周病と男性型脱毛症(AGA)の関連
2023年、歯周病学の専門誌『Journal of Periodontal Research』に、歯周病とAGAの関連を調べたトルコの研究が発表されました。
全身疾患のない25〜65歳の男性385人を対象に、歯周病の状態とAGAの進行程度を調べたところ、25〜44歳では両者の間に統計学的に有意な関連が認められました。一方、45歳以上では統計学的に有意な関連は確認されませんでした。
比較的若い世代では、歯周病とAGAが何らかの共通した要因で結びついている可能性があります。
なぜ若い世代で関連が認められたのでしょうか。年齢が上がるほど、すでにAGAが進行している人も増えるため、年齢によって関連の現れ方が異なる可能性も考えられます。ただし、その理由は今回の研究では明らかになっていません。

なぜ関係するのか:炎症と男性ホルモン
AGAには、男性ホルモンのテストステロンから「5α還元酵素」の働きで作られる、ジヒドロテストステロン(DHT)が関係しています。

DHTは、毛根にある毛乳頭細胞に作用し、髪の毛の成長期を短くする方向に働きます。その結果、髪が十分に太く長く育たないうちに抜け落ち、次第に細く短い毛が増えて薄毛が進行するのです。
炎症を起こした歯肉や歯周組織の細胞では、この5α還元酵素の発現が増えることが報告されています。こうしたことから、歯周病とAGAには、ホルモン代謝に関わる共通した仕組みが存在するのではないかと考えられています。
また、歯周組織の慢性的な炎症は、血流を介して全身の炎症反応にも影響することが知られており、これが毛髪の成長にマイナスに働く可能性も考えられます。
円形脱毛症との関連も
歯周病と円形脱毛症の関連についても研究が行われています。
韓国の全国規模の医療データを用いた研究(2022年発表)では、歯周病のある人は円形脱毛症を発症するリスクが高いという結果が報告されています。
円形脱毛症は、免疫の異常によって毛包が攻撃される自己免疫性の疾患で、男性ホルモンが関係するAGAとは仕組みが異なります。歯周病も免疫反応が深く関わる病気であることから、両者に共通する免疫・炎症の仕組みが注目されています。

また、円形脱毛症には心理的なストレスが関係する可能性も指摘されています。 ストレスは歯周病の進行にも影響する可能性があるため、こうした共通の要因も含め、歯周病と円形脱毛症の関連については今後の研究を注視したいところです。
歯を磨けば薄毛を予防できる?
現時点では、歯磨きや歯周病治療によって薄毛を予防できるという十分な科学的根拠はありません。
そもそも、歯磨きをしないことと歯周病になることは同じではありません。歯周病には、プラーク(歯垢)だけでなく、喫煙や糖尿病、遺伝、免疫などさまざまな要因が関わっています。また、歯周病のある人にAGAが多かったとしても、年齢や生活習慣など、両者に共通する別の要因が影響している可能性があります。
とはいえ、歯周病を予防し、歯を長く残すためには、毎日の歯磨きが欠かせません。歯周病は糖尿病や心血管疾患など全身の病気との関連も研究されており、脱毛症との関係も今後の研究で明らかになっていくことが期待されます。
最後にもう一度、念を押しておきます。
ハゲている人が歯を磨いていない、というわけでは決してありません。
参考文献
- Özkan Karasu Y, Orbak R, Kaşalı K, Berker E, Kantarci A. Association between androgenetic alopecia and periodontitis. J Periodontal Res. 2023;58(5):1105–1111. DOI: 10.1111/jre.13175
- Kim JS, Lee IJ, Lee MG, et al. Periodontitis and risk of alopecia areata: A nationwide population-based cohort study in Korea. J Eur Acad Dermatol Venereol.
2023;37(3):e397–e399. DOI: 10.1111/jdv.18758







