サブメインビジュアル

かんたんネット予約

予約

044-855-3060

診療時間

2026.09.24
お口の健康
なぜ歯垢を取らないと歯周病は治らないのか?歯ブラシが重要な理由

「歯石を取ってもらったから、もう大丈夫でしょう」

「毎回同じようなブラッシング指導を受けて、正直こりごりです」

「歯みがきの方法は分かっているので、もう教えてもらわなくて大丈夫です」

歯周病の治療を受けている方の中には、このように感じる方もいるかもしれません。確かに、歯を磨くこと自体は、ほとんどの方が知っています。

それでも歯科医院でブラッシング指導を繰り返し行うのは、単に歯みがきの方法を教えるためではありません。歯周病にかかっている歯の周囲に歯垢が残っていると、歯ぐきの炎症が続き、歯周病の改善を妨げるからです。

では、なぜ歯垢を取り除かなければ、歯周病は改善しにくいのでしょうか。今回は、歯垢が歯ぐきに炎症を起こす仕組みと、歯周病治療においてブラッシングが重要な理由を解説します。

歯垢は食べかすではなく細菌の塊

歯垢は、食べ物の残りではありません。多くの細菌が、自ら作ったネバネバした物質に包まれて密集したものです。いわば、大量の細菌がパックされた状態です。

このように、細菌が膜のような構造を作り、その中で集団として存在する状態をバイオフィルムと呼びます。

このバイオフィルムが曲者です。

台所の排水口にできるぬめりも、バイオフィルムの一種です。水を流しただけでは落ちず、こすらなければ取り除けません。

歯の表面に形成されたバイオフィルムも同じです。歯面に強く付着しているため、うがいや洗口液だけで十分に取り除くことは困難です。

さらに、細菌がネバネバした膜の中で集団を作ると、うがい薬や抗菌剤の成分がバイオフィルムの内部まで届きにくくなり、細菌に十分な効果を得にくいことがあります。

そのため、歯垢を取り除くには、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを使い、バイオフィルムを物理的にこすって壊す必要があります。

歯周病治療でブラッシングが重視されるのは、単に口の中をきれいにするためではありません。歯ぐきに炎症を起こすバイオフィルム(歯垢)を、毎日取り除くためなのです。

歯垢が残っていると歯ぐきの炎症が続く

歯と歯ぐきの境目に歯垢が付着すると、歯垢の中の細菌や、その細菌が作る物質に対して、体の免疫反応が起こります。

細菌から体を守るために、歯ぐきの血管が広がり、多くの血液や免疫細胞が集まります。その結果、歯ぐきに次のような変化が現れます。

  • 歯ぐきが赤くなる
  • 歯ぐきが腫れる
  • 歯みがきのときに出血する
  • 歯ぐきから滲出液が出る

歯ぐきから血が出ると、「歯ブラシで傷つけてしまった」と考える方もいます。しかし、軽く磨いただけで繰り返し出血する場合は、歯ぐきに炎症が起きている可能性があります。

歯垢が残っている限り、炎症の原因も残ります。薬を塗ったり、洗口液を使用したりして一時的に症状が軽くなっても、歯垢が付着したままでは根本的な改善にはつながりません。

歯垢を放置すると歯周ポケットが深くなる

健康な状態では、歯と歯ぐきは付着上皮と呼ばれる組織によって密着し、細菌が歯ぐきの中へ侵入しにくい構造になっています。

しかし、歯垢による炎症が長期間続くと、この付着が少しずつ壊れていきます。歯と歯ぐきの間に隙間が生じ、歯周ポケットが深くなっていきます。

歯周ポケットが深くなると、さらに歯垢がたまりやすくなります。深い部分は歯ブラシの毛先が届きにくいため、細菌が増えやすい環境になります。

つまり、次のような悪循環が起こります。

歯垢が付着する

歯ぐきに炎症が起こる

歯と歯ぐきの付着が壊れる

歯周ポケットが深くなる

さらに歯垢や細菌がたまりやすくなる

炎症がさらに深い部分へ広がると、歯を支えている歯槽骨が吸収されることがあります。これが、歯肉炎から歯周炎へ進行していく仕組みです。

【図案:健康な歯ぐきから歯周ポケットが深くなるまでの変化】

歯ぐきの上と歯周ポケットの中では細菌の質が異なる

歯垢は、付着する場所によって大きく二つに分けられます。

歯ぐきより上に付着するものを歯肉縁上プラーク、歯周ポケットの中に付着するものを歯肉縁下プラークと呼びます。

歯肉縁上プラークは、歯の表面に付着しているため、歯ブラシや歯間ブラシで取り除くことができます。

一方、深い歯周ポケット内に形成された歯肉縁下プラークには、酸素の少ない環境を好む歯周病原細菌が増えやすくなります。深い部分には歯ブラシが届かないため、歯科医院での専門的な処置が必要です。

ただし、歯ブラシが深い歯周ポケットの底まで届かないからといって、毎日のブラッシングに意味がないわけではありません。

歯ブラシが歯周ポケットの奥まで届かなくても効果あり

毎日のブラッシングでは、主に歯ぐきより上にある歯肉縁上プラークを取り除きます。

歯肉縁上プラークを適切に管理すると、歯ぐきの炎症が軽減し、歯周ポケット内へ供給される細菌も減少します。その結果、歯肉縁下プラークが増えにくい環境を作ることができます。

過去の研究でも、歯肉縁上プラークを継続的に取り除くことで、歯周ポケット内の細菌数や細菌の構成に変化が起こることが報告されています。

反対に、歯ぐきの上に歯垢が残り続けると、歯科医院で歯周ポケット内をきれいにしても、新しい細菌が再び供給されてしまいます。

そのため、歯周病治療では次の両方が必要です。

  • 歯科医院で歯石や歯周ポケット内の細菌を取り除く
  • 毎日のブラッシングで歯肉縁上プラークを増やさない

どちらか一方だけでは、歯周病を安定させることは難しくなります。

歯みがきをやめると歯肉炎が起こることが実験でも示されている

ブラッシングと歯肉炎の関係は、古くから研究されています。

健康な歯ぐきの人に一定期間歯みがきを中止してもらった実験では、歯垢が増えるにつれて、歯ぐきの赤みや腫れ、出血などの歯肉炎が現れました。

その後、歯みがきを再開して歯垢を取り除くと、歯ぐきの炎症は改善しました。

この実験からも、歯垢の蓄積が歯肉炎の発症に関係し、ブラッシングによる歯垢の除去が炎症の改善に有効であることが分かります。

ただし、歯周ポケットが深くなり、歯石や歯肉縁下プラークが付着している歯周炎では、ブラッシングだけでは十分ではありません。毎日のセルフケアに加えて、歯科医院での歯周病治療が必要です。

歯石を取るだけでは歯周病が治らない理由

歯石は、歯垢が唾液中のカルシウムなどによって硬くなったものです。歯石そのものよりも、表面に新しい歯垢が付着しやすくなることが問題です。

歯石は歯ブラシでは取れないため、歯科医院で除去する必要があります。

しかし、歯石をすべて除去しても、毎日のブラッシングが不十分であれば、その日のうちから歯の表面に新しい細菌が付着し始めます。

歯科医院で数か月に一度クリーニングを受けていても、その間のほとんどの時間は、ご自身で歯垢を管理しなければなりません。

歯科医院で歯石を取り除くことは重要ですが、それだけで歯周病治療が完結するわけではありません。

歯周病治療の土台は毎日のブラッシング

歯周病を改善するためには、歯の表面を何となく磨くのではなく、歯垢が残りやすい場所を意識する必要があります。

特に注意したいのは、次の部分です。

  • 歯と歯ぐきの境目
  • 歯と歯の間
  • 奥歯の後ろ側
  • 歯並びが重なっている部分
  • 被せ物やブリッジの周囲

歯と歯の間は歯ブラシだけでは十分に清掃できないため、歯間ブラシやデンタルフロスも使用します。

歯周病がある方では、歯周ポケットの深さや歯ぐきの形、歯と歯の隙間の大きさによって適した清掃方法が異なります。力を入れて長時間磨けばよいわけではありません。

どこに歯垢が残っているのかを歯科医院で確認し、その方に合った歯ブラシの当て方や歯間清掃用具を選ぶことが重要です。

歯科医院の治療と毎日のセルフケアは役割が違う

歯科医院では、歯ブラシが届かない歯周ポケット内の歯石や細菌を、専用の器具で取り除きます。

一方、ご自宅でのブラッシングには、毎日新しく付着する歯垢を取り除き、歯ぐきに炎症を起こさせない役割があります。

歯科医院で治療を受けても、歯垢が残り続ければ炎症は再発します。反対に、丁寧に歯みがきをしていても、すでに深い歯周ポケットや歯石がある場合は、セルフケアだけで改善することは困難です。

歯周病治療は、歯科医院に任せるだけの治療でも、患者さんだけが頑張る治療でもありません。

歯科医院で原因を取り除くことと、毎日のブラッシングで歯垢を増やさないこと。この二つがそろって、初めて歯ぐきの炎症が落ち着き、歯周病を安定した状態に保つことができます。

歯みがきを続けているのに出血が改善しない、歯周ポケットが深いといわれた、歯が揺れるなどの症状がある場合は、自己判断で済ませず、歯科医院で検査を受けましょう。

診療時間

※最終受付は診療時間の30分前(予約制)です


駐車場あり 川崎市宮前区神木1-5-2

地図を見る