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歯を失うと食事がしづらくなることはよく知られています。しかし、歯の喪失は単に「食べにくくなる」という問題だけではなく、その後の健康にも影響する可能性があることがこれまでの研究で報告されています。
今回ご紹介するのは、東京科学大学などの研究グループが、日本老年学的評価研究(JAGES)に参加した65歳以上の高齢者約69,000人を対象に行った研究です。参加者を9年間追跡し、歯の本数と死亡リスクとの関連を調べました。
歯が20本未満の人では死亡リスクが上昇
研究では、歯が20本以上ある人と20本未満の人を比較しました。
その結果、歯が20本未満の人では死亡リスクが高くなることが確認されました。
研究チームの解析では、歯が20本未満であることによって死亡リスクは平均で約3.2%ポイント上昇していました。
歯の喪失は高齢者の健康にとって無視できない要因であることが示されたのです。
歯の喪失と死亡リスクとの関連は、これまでも多くの研究で報告されてきました。
しかし、歯の喪失による影響はすべての人で同じなのでしょうか。
例えば、持病のある人とない人、男性と女性では、歯を失ったときの影響の大きさが異なる可能性があります。
そこで今回の研究では、「歯の喪失による死亡リスクの上昇が、どのような人でより大きいのか」に注目して解析が行われました。
影響の大きさには個人差があった
今回の研究で特に注目されたのは、「歯の喪失による影響は誰にでも同じではない」という点です。
詳しく分析したところ、歯の喪失による死亡リスクへの影響は人によって異なり、特に次のような特徴を持つ人で大きい可能性が示されました。
- 男性
- 心疾患のある人
- 抑うつ症状のある人
つまり、同じように歯を失った場合でも、その後の健康への影響は一様ではなく、健康状態や背景によって差があることが分かりました。
では、なぜこれらの人で影響が大きくなったのでしょうか。今回の研究では理由までは明らかにされていませんが、いくつかの可能性が考えられます。

男性
男性は女性に比べて歯科受診の機会が少ないことが知られています。また、喫煙や生活習慣病などのリスク因子を抱えている人も少なくありません。
こうした背景が重なり、歯を失った後の健康への影響がより大きく現れた可能性があります。
心疾患のある人
心疾患のある人では、今回の研究で歯の喪失による死亡リスクへの影響が大きい可能性が示されました。
その理由は今回の研究では明らかにされていませんが、歯周病と心血管疾患との関連についてはこれまで多くの研究で報告されています。
歯周病による慢性的な炎症や歯周病菌が血流を介して全身に影響を及ぼす可能性も指摘されており、心疾患を持つ人では口腔の健康管理がより重要になるのかもしれません。

抑うつ症状のある人
抑うつ症状があると、食欲や活動量の低下、人との交流の減少などがみられることがあります。
また、セルフケアや歯科受診が後回しになりやすく、歯の喪失による影響が大きくなった可能性も考えられます。

なぜこの結果が重要なのか
これまでの研究でも、歯の喪失と死亡リスクとの関連は報告されてきました。
しかし今回の研究は、「歯の喪失が健康に悪影響を及ぼす可能性がある」だけでなく、「その影響を特に受けやすい人がいる」ことを示した点に特徴があります。
今後は、医科と歯科が連携しながらリスクの高い人を早期に見つけ、歯を失わないための予防や積極的な歯科治療につなげていくことが期待されます。

まとめ
歯の喪失による健康への影響は誰にでも同じではなく、男性や心疾患のある人、抑うつ症状のある人でより大きい可能性が示されました。
より多くの方が健康で長く生きるために、口腔の健康の大切さを改めて考えさせられる研究結果といえるでしょう。
参考文献
⑴Matsuyama Y, Kiuchi S, Yamamoto T, Aida J. High-Dimensional Effect Heterogeneity of Tooth Loss on Mortality. Journal of Dental Research. 2025. doi:10.1177/00220345251414360







