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むし歯予防で最も重要なのは、飲食の回数や内容、歯みがきなど、毎日の生活習慣です。
そのうえで、歯みがきによってプラークを減らし、フッ化物を利用して歯を守ることが重要です。
一般には「フッ素」と呼ばれていますが、歯みがき剤や洗口剤などに利用されているのは、正確には「フッ化物」です。この記事ではフッ化物と表記します。
歯みがきだけでは、むし歯予防に限界があります
歯みがきは、歯の表面に付着したプラークを減らすために欠かせません。
しかし、歯の細かな溝、歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目などには、歯ブラシの毛先を完全に届かせることはできません。
細菌は歯ブラシの毛先よりもはるかに小さく、歯の表面には、毛先が入り込めないほど微細な凹凸もあります。歯みがきによってプラークを減らすことはできても、口の中の細菌をすべて取り除くことはできません
また、除去したプラークも時間とともに再び形成されるため、歯みがきだけでむし歯を防ぐことには限界があります。そこで重要になるのが、フッ化物によって歯を守ることです。
同じように歯をみがいていても、フッ化物配合歯みがき剤を使用した人は、フッ化物を含まない歯みがき剤を使用した人よりも、むし歯の増加が少ないことが確認されています。¹˒²

むし歯は「脱灰」と「再石灰化」のバランスで進みます
食事や間食をすると、プラーク中の細菌が糖を利用して酸をつくります。
この酸によって、歯からカルシウムやリン酸などのミネラルが溶け出す現象を「脱灰」といいます。
一方、唾液には、溶け出したミネラルを再び歯に戻す「再石灰化」という働きがあります。
口の中では、脱灰と再石灰化が繰り返されています。
再石灰化が間に合っているうちは歯の状態が保たれますが、飲食回数が多い、プラークが多い、唾液が少ないなどの理由で脱灰が優位な状態が続くと、やがて歯に穴が開き、むし歯になります。
フッ化物は、この脱灰と再石灰化のバランスを、歯を守る方向へ動かします。³˒⁴
フッ化物がむし歯を予防する3つの働き
1.歯からミネラルが溶け出すのを抑える
フッ化物が歯の表面やプラーク中に存在すると、酸によってカルシウムやリン酸が溶け出す「脱灰」が起こりにくくなります。
特に食事や間食のあと、口の中が酸性に傾いたときに、歯の表面や唾液、プラーク中にある少量のフッ化物が、歯が溶けるのを抑えます。³˒⁴

2.初期の脱灰部分の再石灰化を促進する
脱灰によって歯から失われたカルシウムやリン酸は、唾液の働きによって再び歯に戻ります。
このときフッ化物が存在すると、再石灰化が進みやすくなります。再石灰化によって形成された結晶は、以前よりも酸に溶けにくい性質を持つようになります。³˒⁴
ただし、再石灰化によって修復できるのは、歯の表面が白く濁るなど、まだ穴が開いていない初期段階です。
すでに歯に穴が開いたむし歯が、フッ化物配合歯みがき剤だけで元どおりになるわけではありません。

3.むし歯菌が酸をつくる働きを抑える
フッ化物には、プラーク中の細菌が糖を利用して酸をつくる際に必要な酵素の働きを妨げ、酸の産生を抑える作用があります。³

使い方によって異なるフッ化物の予防効果
フッ化物のむし歯予防効果は、使用する製品や濃度、使う回数、年齢、むし歯のなりやすさなどによって異なります。
複数の研究をまとめた報告では、フッ化物を含まない歯みがき剤と比べて、1,000~1,500ppmF程度のフッ化物配合歯みがき剤に、むし歯を予防する効果が認められています。¹˒²
実際に、小児・青少年を対象とした研究では、フッ化物配合歯みがき剤を使用した場合、むし歯の増加が平均で約24%抑えられました。¹
こうした効果を得るために基本となるのは、フッ化物配合歯みがき剤などを毎日使用し、フッ化物を繰り返し歯に作用させることです。
歯科医院で行うフッ化物塗布も、脱灰を抑え、再石灰化を促すという基本的な働きは、家庭で使用するフッ化物と変わりません。一方で、歯科医院では家庭用よりも高濃度のフッ化物を使用します。毎日のフッ化物利用を基本とし、年齢やむし歯のなりやすさに応じて、歯科医院での塗布を追加します。
また、家庭で行うフッ化物応用を組み合わせる方法もあります。例えば、小児・青少年を対象とした研究では、フッ化物配合歯みがき剤にフッ化物洗口を加えることで、歯みがき剤だけを使用した場合よりも、むし歯予防効果がやや高くなることが示されています。⁶
フッ化物は生活習慣に取り入れることが重要です
フッ化物の主な作用は、歯がつくられる時期に体内へ取り込まれることではなく、生えている歯の表面に直接作用することです。
フッ化物は使用後、歯の表面だけでなく、プラークや口腔粘膜、唾液中にも一時的に保持されます。そこから少量のフッ化物イオンが供給され、口の中が酸性になったときに脱灰を抑え、再石灰化を促します。³˒⁴
この働きを生かすためには、フッ化物配合歯みがき剤やフッ化物洗口を毎日の生活習慣に取り入れ、フッ化物を繰り返し歯に作用させることが大切です。
歯科医院では、普段使用している歯みがき剤の濃度や量、すすぎ方、飲食習慣などを確認し、その人に合った方法を助言します。また、定期的にお口の状態を確認することで、歯に穴が開く前の初期むし歯や、磨き残しやすい場所を早期に見つけ、進行を防ぐことにもつながります。
参考文献
1.Marinho VCC, Higgins JPT, Sheiham A, Logan S. Fluoride toothpastes for preventing dental caries in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2003;1:CD002278.
2.Walsh T, Worthington HV, Glenny AM, Marinho VCC, Jeroncic A. Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries. Cochrane Database Syst Rev. 2019;3:CD007868.
3.Buzalaf MAR, Pessan JP, Honório HM, ten Cate JM. Mechanisms of action of fluoride for caries control. Monogr Oral Sci. 2011;22:97–114.
4.Featherstone JDB. Prevention and reversal of dental caries: role of low level fluoride. Community Dent Oral Epidemiol. 1999;27:31–40.
5.日本口腔衛生学会、日本小児歯科学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科医学会.う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年版).
6.Marinho VCC, Higgins JPT, Sheiham A, Logan S. Combinations of topical fluoride versus single topical fluoride for preventing dental caries in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2004;1:CD002781.
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