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お口の健康
むし歯菌に感染したら、むし歯になるのか?

「むし歯菌がうつるから、スプーンの共有やキスは避けたほうがよい。」

このような話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

しかし現在では、むし歯は一つの細菌だけで決まる病気ではないことが分かってきています。

では、むし歯菌に感染したら本当にむし歯になるのでしょうか。

なぜ「むし歯菌に感染するとむし歯になる」と考えられていたか?

1950~1960年代には「むし歯は感染症・伝染性の病気である」という考え方が広く受け入れられていました。

その理由は、動物を使った実験で次のような結果が得られたためです。

  • むし歯のある動物と一緒に飼育したり、その動物の糞便を食べたりした動物だけにむし歯が発生した。
  • むし歯の病巣から分離したある種の連鎖球菌を、これまでむし歯のなかった動物に感染させると、むし歯が発生した。

これらの研究から、「むし歯は細菌が人から人へ感染して起こる病気」と考えられるようになりました。

その後、SM菌(ミュータンスレンサ球菌)が、むし歯の主要な原因菌として注目されるようになり、「むし歯はSM菌による特異的な感染症」という考え方が、長い間むし歯学の中心となりました。

しかし、研究が進むにつれて、この考え方だけでは説明できないことが次々と分かってきました。

SM菌がいてもむし歯にならない人がいた


例えば、次のような研究結果が報告されています。

  • SM菌が存在していても、むし歯が進行していない人がいる。
  • 反対に、SM菌がほとんど検出されなくても、むし歯がみられる人がいる。
  • SM菌の存在だけでは、集団全体のむし歯の発生を十分に説明できず、ある研究では約6~10%しか説明できなかった。
  • 小児の唾液中のSM菌数を測定しても、将来むし歯が増えるかどうかを正確に予測できなかった。
  • 唾液中のSM菌数に大きな変化がみられない集団でも、数年間でむし歯の発生率が大きく低下した。

このような研究結果から、**「SM菌だけがむし歯の原因ではない」**という考え方が広まりました。

現在は考え方が変わっています

近年の研究では、口の中には数百種類の細菌が存在し、それらがバランスを保ちながら生活していることが分かっています。

現在では、むし歯は特定の細菌への感染だけで起こる病気ではありません。糖を摂る回数などの生活習慣によって口の中の環境が変わり、細菌がつくる酸によって歯が繰り返し溶かされることで発症すると考えられています。

つまり、

SM菌がいる=むし歯になる

ではありません。

実際、多くの健康な人の口の中にも常在菌としてSM菌は存在しているのです。

むし歯の原因として、昔から変わらない事実があります

研究が進むにつれて、むし歯の原因に対する考え方は大きく変わってきました。しかし、昔から現在まで変わらない事実があります。

それは、糖を頻繁に摂取すると、口の中が酸性になり、歯が溶けやすくなることです。

むし歯は、口の中の細菌が糖を分解して酸をつくり、その酸によって歯の表面が溶けることで始まります。

口の中には、もともと多くの細菌が存在しています。糖を何度も摂取すると口の中が酸性になり、酸をつくる細菌が活動しやすい環境になります。むし歯は、特定の菌が入ってきたことだけで起こるのではなく、食生活によって、歯が酸にさらされる状態が繰り返されることで起こります。

現在も昔も、むし歯予防の基本は変わっていません。

  • 砂糖を摂る回数を減らす
  • 歯みがきでプラークを落とす
  • フッ化物を使用する

この中でも、特に重要なのが砂糖を摂る回数です。

問題なのは、SM菌などの細菌が口の中に存在すること自体ではありません。生活習慣によって、細菌が酸をつくり続けやすい環境をつくってしまうことなのです。

スプーンの共有だけを避けても、むし歯予防にはなりません

SM菌などの口腔細菌が、唾液を介して人から人へ伝わることはあります。しかし、細菌が口の中に入ったことと、むし歯になることは同じではありません。

また、親から子どもへの口腔細菌の伝播は、食器を共有する前から、日常生活のさまざまな接触を通して起こります。そのため、むし歯菌をうつさないようにと、スプーンの共有や親子の触れ合いを必要以上に気にする必要はありません。

むし歯は、菌がうつっただけで決まる病気ではなく、その後の口の環境や生活習慣によって起こる病気なのです。

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