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お口の健康
ニコチンパウチとは?口の中への影響と現在わかっていること

2026年7月2日付の日本経済新聞朝刊で、口の中に入れて使用する「ニコチンパウチ」が取り上げられました。 日本でも利用者が増えている一方、「体への影響は?」「口腔がんになるの?」「歯には悪くないの?」と疑問を持つ方も少なくありません。

現時点では、ニコチンパウチに関する長期的な研究はまだ十分ではありません。

この記事では、現在の研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを整理しながら、口の中への影響について解説します。

ニコチンパウチとは?

ニコチンパウチは、ニコチンを含んだ小さなパウチを上唇と歯ぐきの間に挟んで使用する製品です。

紙巻きたばこのように燃焼せず、加熱式たばこのような蒸気も発生しません。そのため煙を吸い込むことがなく、受動喫煙の原因にもなりません。

また、多くのニコチンパウチにはタバコ葉は含まれておらず、化学的に製造されたニコチンが使用されています。¹

なぜ話題になっているのか

近年、ニコチンパウチは世界的に急速に普及しています。

一方で、WHO(世界保健機関)は若年者への普及やニコチン依存の拡大を懸念しており、各国に適切な規制や監視を求めています。⁴

煙が出ず臭いも少ないため、「紙巻きたばこより安全」というイメージを持たれやすい製品ですが、長期的な安全性についてはまだ十分なデータがありません。¹²

口の中への影響は?

口腔がんとの関係

「ニコチンパウチを使うと口腔がんになりますか?」

現時点での答えは、

「口腔がんとの因果関係を示す十分なエビデンスはありません。」¹²

です。

一方で、「口腔がんにならない」と証明されているわけでもありません。

ニコチンパウチは比較的新しい製品であり、10年、20年といった長期間使用した人を追跡した研究はまだ不足しています。¹²

今後の長期研究によって評価が変わる可能性があります。

歯周病への影響

ニコチンには血管を収縮させる作用があります。

歯ぐきへの血流が低下すると、歯周組織の修復や免疫反応に影響し、歯周病の進行や治療成績に悪影響を及ぼす可能性があります。²³

歯肉・口腔粘膜への刺激

ニコチンパウチは同じ場所に長時間接触するため、局所的な刺激が加わります。

一時的な白色変化や発赤などの粘膜変化が報告されていますが、これらが長期的にどのような影響を及ぼすかについては、まだ十分に分かっていません。²³

抜歯やインプラント後の治癒への影響

抜歯やインプラント治療後は、傷口に十分な血流が確保されることが重要です。

ニコチンによる血管収縮は創傷治癒を遅らせる可能性があるため、紙巻きたばこや加熱式たばこと同様に、ニコチンパウチについても使用は控えることが望ましいと考えられます。²³

虫歯のリスク

虫歯との直接的な関連は証明されていませんが、使用方法によっては虫歯のリスクが高まる可能性があります。

ニコチンパウチは、上唇と歯ぐきの間に長時間挟んで使用する製品です。

パウチが接している部位では、局所的に唾液による洗浄作用(自浄作用)が妨げられる可能性があります。この点を直接検証した研究はまだ十分ではありませんが、砂糖入り飲料や砂糖を含むのど飴を併用した場合には、糖が局所に停滞しやすくなることが考えられます。

砂糖入りコーヒーやスポーツドリンク、清涼飲料水、砂糖を含むのど飴は、口腔内細菌によって代謝され、酸を産生します。その結果、歯の表面(エナメル質)は溶けやすい状態になります。

このような環境では、糖が局所に停滞しやすくなり、脱灰が繰り返されることで虫歯のリスクが高まる可能性があります。(著者の考察)

**現在のところ、ニコチンパウチが虫歯を増やすことを示した研究は見当たりません。**¹³

特に上顎前歯部はパウチを挟む位置と重なることが多いため、毎日の歯みがきの際に状態を確認し、定期的な歯科検診でチェックを受けるとよいでしょう。

使用する場合に気を付けたいこと

ニコチンパウチを使用する場合は、次の点に注意しましょう。

  • 就寝中の使用は避けましょう。 長時間同じ部位に接触し続けることで、粘膜への刺激が続く可能性があります。
  • 砂糖入り飲料や砂糖を含むのど飴との併用は控えましょう。 虫歯のリスクが高まる可能性があります。
  • 毎日、パウチを挟む部位を鏡で確認しましょう。 白い変化、赤み、潰瘍、しこりなどが続く場合は、歯科または口腔外科を受診しましょう。
  • 定期的な歯科検診を受けましょう。 特に上顎前歯部やパウチを挟む部位は、虫歯や粘膜の異常がないか確認してもらうことをおすすめします。
  • 抜歯後やインプラント治療後、歯周病治療(SRPなど)の後は使用を控えましょう。 ニコチンによる血管収縮は、傷の治癒や歯ぐきの回復に影響を及ぼす可能性があります。

参考文献

  1. Travis N, Warner KE, Goniewicz ML, et al. The Potential Impact of Oral Nicotine Pouches on Public Health: A Scoping Review. Nicotine & Tobacco Research. 2025;27(4):598-610. doi:10.1093/ntr/ntae131.
  2. Polosa R, et al. Nicotine pouches, oral cancer and tobacco harm reduction: a mini review. Frontiers in Oral Health. 2026.
  3. Al-Otaibi HM, Althobiani MA. Nicotine pouches: a narrative review of the existing literature. Frontiers in Public Health. 2025.
  4. World Health Organization. WHO Study Group on Tobacco Product Regulation (TobReg): Report on the Scientific Basis of Tobacco Product Regulation. WHO.
  5. U.S. Food and Drug Administration (FDA). FDA Authorizes Marketing of 20 ZYN Nicotine Pouch Products after Extensive Scientific Review. 2025.

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