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「歯を磨くのはむし歯予防のため」——そう思っていませんか?
実は歯みがきには、お口の健康を守るだけでなく、肺炎を防ぐ可能性もあることがわかっています。今回は、お口のケアと誤嚥性肺炎の関係について、できるだけわかりやすくお伝えします。
誤嚥性肺炎とは?
飲み込む力が弱まると、食べ物や唾液が誤って気管に入ることがあります。これを「誤嚥(ごえん)」といいます。
加齢や脳血管疾患、認知症などが原因で起こりやすく、特に高齢者に多い肺炎の引き金となっています。
注目すべき点は、肺炎を引き起こすのは食べ物そのものではなく、唾液や歯垢(プラーク)に潜む細菌だということです。つまり、お口の中が清潔かどうかが、発症リスクを左右するのです。

歯垢はただの汚れじゃない
歯垢(プラーク)は、細菌が膜状に集まった「バイオフィルム」という構造を持っています。浴室の排水口にできるぬめりと同じイメージです。

そのため、水でサッと流すだけでは落ちません。歯ブラシで物理的にこすり落とす「機械的清掃」が必要になります。
毎日の歯みがきによって歯垢を取り除くことで、お口の中の細菌を減らし、万が一誤嚥が起きた場合でも肺へ運ばれる細菌を少なくすることができます。

うがいの役割も意外と大きい
うがいには、歯みがきによって除去された細菌や食べかす(食物残渣)、唾液中に浮遊する細菌を洗い流す効果が期待できます。
ただし、歯垢(プラーク)はバイオフィルムであるため、うがいだけで取り除くことはできません。まず歯みがきで歯垢を除去し、その後うがいで洗い流すことが大切です。
また、うがいをするときは唇・頬・舌・のどの筋肉を使います。そのため、飲み込む力(嚥下機能)の維持にも役立つと考えられています。
こうした機能が保たれることで、細菌を含んだ唾液が誤って気管に入るリスクを減らし、誤嚥性肺炎予防の一助になると考えられています。

歯みがきによる歯垢除去とうがいによる洗浄を組み合わせることで、お口の中をより清潔に保ちやすくなります。
歯垢(プラーク)は毎日の歯みがきで除去できますが、磨き残しが続くと細菌が成熟し、お口の中に残りやすくなります。そのため、定期的に歯科医院でチェックを受け、セルフケアだけでは落としきれない汚れを専門的に除去することをおすすめします。
若い人にも無関係ではありません
「誤嚥性肺炎は高齢者の話」と思われがちですが、お口のケアの恩恵は若い世代にも及びます。
口の中の細菌が出す酵素の一部は、インフルエンザウイルスが体内へ入りやすくなることに関与している可能性が指摘されています。
高齢者施設で行われた研究では、専門的な口腔ケアを受けたグループでは98人中1人しかインフルエンザを発症しませんでした。一方、通常の口腔ケアのみを行ったグループでは92人中9人が発症しており、お口の中を清潔に保つことの重要性が示されています。
若い世代で同様の効果が十分証明されているわけではありませんが、むし歯や歯周病の予防だけでなく、健康管理の一環としてお口を清潔に保つことは大切です。⑷
今日からできること
毎食後の歯みがきとうがいの習慣、そして3〜6か月ごとの定期的な歯科受診。
それだけでも、お口の中の細菌環境は大きく変わります。
小さなケアの積み重ねが、お口の健康だけでなく、食べる力や全身の健康を守ることにつながります。

【参考文献】
1.日本老年歯科医学会. オーラルフレイル対策・口腔機能管理に関する各種提言.
2.Yoneyama T, Yoshida M, Matsui T, Sasaki H. Oral care and pneumonia. Lancet. 1999;354(9177):515.
3.Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, et al. Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2002;50(3):430-433.
4.Abe S, Ishihara K, Adachi M, Okuda K. Professional oral care reduces influenza infection in elderly. Arch Gerontol Geriatr. 2006;43(2):157-164.
5.日本呼吸器学会. 成人肺炎診療ガイドライン2024.
6.日本呼吸器学会. 誤嚥性肺炎診療ガイドライン.







