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暑い季節になると、熱中症予防のためにスポーツドリンクを飲む機会が増えます。
スポーツドリンクは、運動時の水分や電解質、エネルギーを補給できる飲み物であり、長時間の運動や大量に汗をかく場面では有効です。
一方で、糖質と酸を含むため、飲み方によっては歯への負担が大きくなることがあります。
今回は、スポーツドリンクとむし歯の関係、そして夏の適切な水分補給について解説します。
スポーツ選手はむし歯が多い
スポーツ選手は健康的なイメージがありますが、実際にはむし歯や歯周病の割合が高いことが国内外で報告されています。
2012年ロンドンオリンピックに参加した278名を対象とした調査では、約55%の選手にむし歯が認められました。¹
もちろん原因はスポーツドリンクだけではありません。運動中の口腔乾燥や頻繁な補食・補給など、さまざまな要因が重なっていると考えられています。しかし、糖質を含む飲料を頻繁に摂取することも、その一因と考えられています。¹⁴
スポーツドリンクが歯に与える影響
一般的なスポーツドリンクには糖質が含まれています(含有量は製品によって異なります)。
また、多くの製品は酸性であり、歯が酸にさらされやすい環境をつくります。
むし歯菌は糖質を利用して酸を作り出します。さらに、スポーツドリンク自体も酸性であるため、頻繁に飲むことで歯が酸にさらされる時間が長くなります。
特に、運動中に少しずつ何度も飲み続ける習慣は、口の中が酸性の状態になりやすく、むし歯や酸蝕症のリスクを高める可能性があります。⁵


※スポーツドリンクに含まれる糖質量や酸性度(pH)は製品によって異なります。購入時には栄養成分表示も参考にするとよいでしょう。
水や麦茶には糖質が含まれていないため、日常生活や短時間の運動では基本的な水分補給に適しています。一方、スポーツドリンクには糖質と電解質が含まれており、長時間の運動や大量に汗をかく場面では有効です。ただし、製品によって糖質量には差があり、必要以上にだらだら飲み続けると、むし歯や酸蝕症のリスクが高まる可能性があります。
夏のスポーツでは水だけで十分でしょうか?
「スポーツドリンクは歯に悪いなら、水だけ飲めばよいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、答えは運動の内容によって異なります。
水や麦茶で十分な場合
次のような場合は、水や麦茶でも十分なことが多いとされています。²³
- 日常生活での水分補給
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- 60分未満の運動
- 涼しい環境での運動
スポーツドリンクが役立つ場合
一方、
- 真夏の屋外スポーツ
- 部活動
- サッカーや野球など長時間の競技
- 60〜90分以上続く運動
- 大量に汗をかく環境
では、水だけでは汗とともに失われる水分やナトリウム、エネルギーを十分補えないことがあります。²³
このような場面では、スポーツドリンクは有効な選択肢になります。
なお、競技レベルが高くなるほど、水分や栄養補給は競技特性や個人差に合わせて調整されます。
競技レベルの高いアスリートでは、自身の発汗量や競技時間、競技強度、胃腸の状態などを考慮し、水、スポーツドリンク、糖質ジェルなどを組み合わせた個別の栄養戦略が一般的です。²
そのため、「水がよい」「スポーツドリンクがよい」と一律に言えるものではなく、競技内容や運動時間、発汗量に応じて適切な水分・栄養補給を選択することが重要です。
一般の方は、普段の水分補給は水や麦茶を基本とし、長時間の運動や大量に汗をかく場面でスポーツドリンクを活用することを意識すれば十分でしょう。
歯科の立場からは、スポーツドリンクを必要以上にだらだら飲み続けないことが大切です。
発汗による口の乾燥にも注意
夏の運動では大量の汗をかくため、体内の水分が減少し、口の中が乾燥しやすくなります。⁴
唾液には、
- むし歯菌が作った酸を中和する
- 糖質を洗い流す
- 歯の再石灰化を助ける
といった重要な働きがあります。⁴
口腔内が乾燥すると、これらの働きが十分に発揮されず、むし歯になりやすい環境になります。
その状態で糖質を含むスポーツドリンクを繰り返し摂取すると、歯への負担はさらに大きくなる可能性があります。⁴⁵
むし歯リスクを減らす飲み方
スポーツドリンクを避ける必要はありません。
大切なのは、必要な場面で適切に利用することです。
例えば、
- 運動中にまとめて飲み、だらだら飲み続けない
- 普段の水分補給は水や麦茶を基本にする
- 長時間運動や大量発汗時のみスポーツドリンクを利用する
- ストロー付きボトルやストローを使用し、飲料が歯に触れる時間をできるだけ短くする
- 飲んだ後は水で軽く口をすすぐ
- フッ化物入り歯みがき剤を1日2回以上使用する習慣をつける
といった工夫で、歯への影響を減らすことができます。⁵
まとめ
スポーツドリンクは、飲み方によってはむし歯の原因の一つになります。
一方で、長時間の運動や大量の発汗時には、水分や電解質、エネルギーを補給する有効な飲み物でもあります。²³
つまり、大切なのは「飲むか飲まないか」ではなく、必要な場面で適切に利用することです。
また、夏は発汗による口腔乾燥も起こりやすく、唾液の防御機能が低下しやすい季節です。⁴
普段の水分補給は水や麦茶を基本とし、スポーツドリンクは長時間の運動や大量に汗をかく場面で上手に活用することが、全身の健康だけでなく、お口の健康を守ることにもつながります。
参考文献
① Needleman I, Ashley P, Petrie A, et al.
Oral health and impact on performance of athletes participating in the London 2012 Olympic Games: a cross-sectional study.
Br J Sports Med. 2013;47(16):1054-1058.
② Sawka MN, Burke LM, Eichner ER, et al.
American College of Sports Medicine Position Stand: Exercise and Fluid Replacement.
Med Sci Sports Exerc. 2007;39(2):377-390.
③ Casa DJ, DeMartini JK, Bergeron MF, et al.
National Athletic Trainers' Association Position Statement: Exertional Heat Illnesses.
J Athl Train. 2015;50(9):986-1000.
④ Dawes C, Pedersen AML, Villa A, et al.
The functions of human saliva: A review sponsored by the World Workshop on Oral Medicine VI.
Arch Oral Biol. 2015;60(6):863-874.
⑤ Featherstone JDB.
The continuum of dental caries—evidence for a dynamic disease process.
J Dent Res. 2004;83(Spec Iss C):C39-C42.
⑥ 日本スポーツ協会
熱中症予防運動指針(最新版)
⑦ 日本糖尿病学会
糖尿病診療ガイドライン(最新版)







